アパート経営の無駄な経費を削減したい!削減方法を解説

投稿日2020/11/26
更新日2020/11/26
アパート経営

アパート経営を行っているオーナーの中には、無駄な経費を削減することによって賃貸経営で得られる利益を増やしたいと考えている人も多いと思います。

しかし、経費の中には、削減することで賃貸経営にマイナスの影響を与える経費もあるため、どのような経費があるのか、どの経費であれば削減できるのかを把握することが重要です。

この記事では、アパート経営にどんな経費がかかるのか、どの経費であれば削減できるのか、経費の削減方法を解説します。

アパート経営における経費削減のメインは固定費

光熱費

アパート経営では様々な経費が生じます。無駄な経費を削減すれば賃貸経営で得られる利益を増やせるため、経費を削減したいと考えているオーナーも多いのではないでしょうか?

アパート経営でかかる経費は「固定費」と「変動費」の大きく2つに分かれます。固定費とは、毎月同額の支払いが発生する経費のことです。アパート経営では以下のような費用が固定費に挙げられます。

  • 管理委託費
  • 地代
  • 不動産ローン手数料
  • 減価償却費
  • 損害保険料
  • 固定資産税・都市計画税

変動費とは、月ごとに支払い金額が変動する経費のことです。アパート経営では以下のような費用が変動費に挙げられます。

  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 接待交際費
  • 交通費
  • 備品消耗品費
  • 仲介手数料
  • 広告宣伝費
  • 修繕・リフォーム費用
  • 新聞図書費

変動費は月によってかかるかどうかが分かりませんが、固定費は毎月または毎年かかることが決まっているため、削減効果は固定費の方が大きいと言えるでしょう。

経費削減できる3つの固定費

経費削減が期待できる代表的な固定費として、以下の3つが挙げられます。

  • 管理委託費
  • 不動産ローン金利
  • 損害保険料

費用の詳細と削減方法を詳しく見ていきましょう。

管理委託費

管理委託費とは、不動産管理会社に管理を委託する際に支払う費用です。管理委託費の金額は家賃収入の5%程度に設定されているのが一般的ですが、不動産管理会社によって異なります。

管理を委託している不動産管理会社の管理委託費が8%または10%といったように5%より高く設定されている場合、管理委託費の負担が大きいと言えます。

このようなケースでは、値下げ交渉を行うもしくは管理委託費の設定が低い不動産管理会社に変更すれば、費用負担を軽減することが可能です。

しかし、スマホアプリの提供といった他の不動産管理会社にはない独自のサービスの利用料が管理委託費に上乗せされているケースもあるため、管理委託費の設定が高い不動産管理会社が全て見直しの余地があるというわけではありません。

管理委託契約書に記載されている業務内容を他の不動産管理会社と比べて、特別なサービスが提供されていないにもかかわらず管理委託費が高く設定されている場合は見直した方が良いと言えるでしょう。

不動産ローン金利

賃貸アパートの購入時には、数千万円または数億円といった多額の資金が必要です。しかし、それらの資金を自己資金で補うことはほとんど不可能なので、基本的には金融機関の提供する不動産ローンを契約して賃貸アパートを購入することになります。

不動産ローンの返済期間は20~30年程度と長期なので、その間に金利が大きく変動することは珍しくありません。

不動産ローンを変動金利で契約した場合、金利が下がれば返済負担を軽減できますが、金利が上がれば返済負担が大きくなります。また、固定金利の場合、金利が上がれば変動金利よりも返済負担を軽減できますが、金利が下がれば変動金利よりも返済負担が大きくなることに。

現在の契約内容が変動金利で金利が上がった場合は固定金利で借り換える、固定金利で金利が下がった場合は変動金利または固定金利で借り換えれば費用負担を抑えることが可能です。

しかし、不動産ローンを借り換える際は、一括返済の手数料や不動産ローン契約時の手数料、団体生命保険料などが上乗せされるため、金利変動が小さい場合には借り換えた方が損をする可能性も。

金利変動が生じたからと言って、借り換えた方が良いとは言い切れないため、借り換えた方が良いか分からない場合は金融機関に相談してから不動産ローンを借り換えましょう

損害保険料

アパート経営では火災や水災、地震といった災害リスクを伴います。火災や水災、地震などが発生した場合、建物が滅失または倒壊して賃貸経営の継続が困難になる、経営を継続するにはアパートの建て直しが必要になるため、万が一に備えて損害保険に加入するのが一般的です。

「火災が発生する可能性は低いので、火災保険に加入せず地震保険だけ加入すれば費用負担を軽減できる」と考えている人も多いと思います。しかし、地震保険は火災保険の付加保険で、単体では加入できないので注意が必要です。

損害保険料の負担を軽減するためには、単年ではなく複数年の契約に切り替えるという方法が挙げられます。複数年の契約に切り替えれば保険料の割引が受けられるため、1年あたりの費用負担を軽減できます。

ただし、契約期間を長くすると途中でアパートを手放した場合に損をするため、手放すことを視野に入れている場合は契約期間が長くなりすぎないように注意しましょう。

経費削減できる3つの変動費

経費削減のメインは固定費ですが、変動費も経費削減が期待できます経費削減が期待できる代表的な変動費として、以下の3つが挙げられます。

  • 水道光熱費
  • 仲介手数料
  • 修繕・リフォーム費用

費用の詳細と削減方法を詳しく見ていきましょう。

水道光熱費

賃貸物件の経営では、管理に水道や電気を使用します。例えば、植栽の水やりや清掃に水道、廊下や階段、エントランスホールなどの照明、清掃に電気などです。

水道代は井戸を掘るスペースを確保できるのであれば、井戸を設置することで毎月の水道代を抑えることが可能です。井戸はボーリングでどのくらいの深さを掘るかによって費用が大きく異なりますが、初期費用として20万~100万円程度かかります。

電気代は蛍光灯が設置されている中古アパートの場合は、LEDに変更することで毎月の電気代を抑えることが可能です。LEDは設置工事を伴うかどうか、設置本数で費用が大きく異なります。

井戸もLEDの設置も初期費用はかかりますが、アパートは一般的な家庭と比べると水道と電気の使用量が多いため、大きな費用削減が期待できます。

既にLEDが設置されていても電気会社の見直しを行えば電気代を削減できる可能性もあるため、一度電気会社に相談してみることも選択肢の1つと言えるでしょう。

仲介手数料

仲介手数料とは、入居者の募集を不動産管理会社に委託して、入居者が見つかって賃貸契約を締結した場合に不動産管理会社に支払う報酬です。

宅地建物取引業法に仲介手数料の上限が定められており、借主または貸主から半月分の家賃を不動産管理会社は受け取ることができます。

しかし、この仲介手数料はあくまでも上限であるため、交渉次第で仲介手数料を減らせます。管理委託費のように毎月費用が生じるものではなく、入退去があった時のみ生じるものなのでそこまで大きな費用削減は期待できません。

とは言っても、学生や会社員が多くを占めるアパートの場合、頻繁に入退去が生じるため、仲介手数料を削減すれば大きな費用削減が期待できるでしょう。

修繕・リフォーム費用

修繕・リフォーム費用とは、入居者が退去した後の原状回復工事や経年劣化に対応するためのリフォームや修繕などにかかる費用です。

これらは変動費の中でも金額の高い経費であるため、抑えることができれば大きな削減効果が期待できます。

不動産管理会社に任せきりになっていると、不要な工事を実施される、提携している工務店やリフォーム会社が工事費を高く見積もりなど、無駄な支出が増える可能性があります。

不要な工事を減らす、提示される工事費が適正価格なのかを判断して価格交渉を行うことで、経費を少しでも削減できるでしょう。

経費削減の交渉ポイント

経費削減によって賃貸経営で得られる利益の最大化を図りたいと考えているオーナーも多いと思いますが、何でも経費を削減すれば良いというわけではありません。

管理委託費や修繕・リフォーム費用などのように、削減することによって不動産管理会社との関係が悪化する、資産価値の低下や入居者の不満増加など賃貸経営にマイナスの影響を与える可能性もあるので注意が必要です。

このようなトラブルを避けるために、以下の2つの経費削減のポイントを押さえながら交渉を行うことが重要です。

  • 管理会社との契約を見直す
  • 他の業者の見積もりを提示する

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

管理会社との契約を見直す

1つ目のポイントは、管理会社との契約内容を見直すことです。ただ単に管理委託費の値下げを不動産管理会社に提示した場合、不動産管理会社にとっては重要な収入が減少するので交渉に応じてもらえる可能性が低いと言えます。

仮に交渉に応じてもらえても、空室が生じた場合に他の物件を先に紹介されるといったように不動産管理会社との関係が悪化するということも珍しくありません。

そこで、定期巡回の回数が週2回となっているのを週1回に減らす、日常清掃はオーナー自身が行う、不要な管理業務を管理委託契約から省くなど、契約内容の見直しとともに管理委託費の値下げを要求します

そうすれば、不動産管理会社は業務負担を多少軽減できるため、値下げ交渉に応じてもらえる可能性が高まります。また、双方にとってWIN-WINの提案であるため、関係が悪化するリスクも抑えられるでしょう。

他の業者の見積もりを提示する

もう1つは他の業者の見積もりを提示することです。不動産管理会社が提示する原状回復工事やリフォーム、修繕にかかる工事費が相場通りとは限りません。

だからと言って、何でも値下げを要求すると、不動産管理会社との関係が悪化するので注意が必要です。そのような事態を未然に防ぐには、見積もりが高いと感じた際に、比較対象となる他の業者の見積もりを提示しながら値下げを要求することが重要です。

他の業者の見積もりを提示すれば値下げを要求する根拠を伴っているため、不動産管理会社が要求を断りにくくなります。工事規模が大きく、工事費が高い場合のみ他の業者の見積もりを提示すれば、不動産管理会社との関係も悪化しにくいと言えるでしょう。

アパート経営の経費削減には節税も重要

法人化

アパート経営で得られる利益の最大化を図る方法は、経費削減だけではありません。所得税の節税も利益の最大化を図る上で必要不可欠です。

アパート経営で得た家賃収入は不動産所得として扱われます。不動産所得は給与所得といった他の所得との合計金額に所得税が課されますが、金額が増えるほど税率が高くなる累進課税が適用されているので注意が必要です。

節税によって所得税を減らすことができれば利益の最大化が図れますが、どのような所得税の節税方法があるのでしょうか?所得税の節税方法として、以下の2つが挙げられます。

  • 経費を計上する
  • アパート経営を法人化する

それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

経費を計上する

1つ目は、経費を計上するという方法です。アパート経営を行っているオーナーの中には、確定申告に手間と時間がかかるため、経費の計上を疎かにしている人も多いと思います。

所得税はアパート経営で得た家賃収入から経費を引いた不動産所得と給与といった他の所得を合算した金額に対して課されるため、経費を計上しなければ多くの税金を支払うことに。

そのため、少しでも所得税を抑えるためには、経費を計上することが必要不可欠と言えます。確定申告に手間と時間がかかる、何が経費として認められるのか分からず困っている人には、税金の専門家である税理士に相談することをおすすめします。

税理士に相談した場合は、数万円から数十万円の報酬を支払う必要がありますが、確定申告の手間と時間を省ける、経費を計上することで所得税を減らせることを考えると、相談するのも選択肢の1つと言えるでしょう。

アパート経営を法人化する

もう1つはアパート経営を法人化するという方法です。アパート経営を行っている人の中には、複数棟の運用を行っている人も多いと思います。

仮に、アパート経営で得られる家賃収入と給与といった他の所得を合わせた金額が4,000万円以下の場合、所得税と住民税を合わせると50%もの税金を課されることになります。

しかし、資本金1億円以下の法人に対して課される法人税や法人住民税などを足した実効税率は35%程度と一律なので、法人化した方が節税効果を高められます

法人化と言っても、法人化するには法人を立ち上げなければなりません。法人の立ち上げ方や法人を立ち上げるメリット、タイミングなどについて詳しく見ていきましょう。

法人の立ち上げ方

法人には、株式会社や合同会社などいくつか種類があります。代表的な法人である株式会社の立ち上げ方は以下の手順で行います。

  1. 商号・目的・所在地・取締役・資本金などを決める
  2. 会社印を作成する
  3. 発起人決定書を作成する
  4. 定款を作成・押印する
  5. 公証人役場で定款の認証を受ける
  6. 法務局で登記申請を行う
  7. 税務署に必要書類を提出する
  8. 市町村役場に必要書類を提出する
  9. 都道府県税事務所に事業開始等申告所(法人設立届出書)を提出する

株式会社の設立には、2週間から1カ月程度の時間と30万円程度の費用がかかります。手続きに不備があった場合、時間と費用がさらにかかってしまうので税理士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

専門家に依頼すると報酬を支払わなくてはなりませんが、法人手続きにかかる手間を省ける、確実に法人を設立できるでしょう。

法人を立ち上げるメリット

法人を立ち上げるメリットは、所得税を節税できるだけではありません。他にも以下のようなメリットが挙げられます。

  • 計上できる経費の種類が増えることで節税効果が高まる
  • 損失の繰越期間が3年から10年に延びる
  • 家族を役員にすれば役員報酬を受け取れる

法人設立は時間と費用がかかりますが、法人化のメリットを考えると、時間と費用をかけても法人化してアパート経営を行った方が良いと言えるでしょう。

法人を立ち上げるタイミング

法人化には多くのメリットがあるため、すぐ法人化したいと考えている賃貸物件のオーナーも多いかもしれませんが、いつでも法人化すればいいというわけではありません。

家賃収入が少ない状況で法人を立ち上げると、個人でアパート経営を行うよりも多くの税金を支払わなくてはならないので注意が必要です。

個人の場合、不動産所得と給与所得といった他の所得の合計金額900万円を超えると、所得税と住民税の合計が43%以上になるため、法人の実効税率を超えます。

そのため、不動産所得と給与所得といった他の所得の合計金額が900万円を超えたタイミングが法人化を立ち上げるタイミングと言えるでしょう。

まとめ

アパート経営で経費をうまく削減すれば利益の最大化を図ることができます。しかし、全ての経費を削減できるというわけではなく、削減しない方がいい経費もあるので注意が必要です。

そのため、アパート経営の経費を削減したい場合は、どんな経費があるのか、削減できるのはどの経費なのか、経費の削減方法をよく理解してから経費削減に取り組むことが重要です。

利益の最大化を図るには、経費を削減する以外にも経費を計上する、法人化するなどの方法も挙げられます。いずれも専門的な知識を必要とするため、よく分からない場合は、司法書士や税理士といった専門家に相談しましょう