失敗しない不動産管理会社の選び方 7つのチェックポイントと契約までの手順

投稿日2020/10/28
更新日2020/10/28
不動産管理会社

不動産管理会社を変えたい、または、新規で管理会社を探しているオーナー向けの記事です。本稿の前半では、管理会社の主な業務と5タイプを紹介。これを理解することでミスマッチの防止が期待できます。

さらに後半では、管理会社の具体的な選び方、7つのチェックポイント、契約までの手順をわかりやすくお話しします。

不動産管理会社の業務にはPMとBMがある

不動産管理会社をうまく選ぶには、まず彼らの業務をオーナーが理解することです。なぜなら、一口に管理会社といっても、それぞれ業務領域や得意分野が違うからです。この部分を理解すると、ご自身が求める管理会社か判断しやすくなります。

管理会社の業務は、次の2つに大別されます。

  • プロパティマネジメント(通称:PM)
  • ビルマネジメント(通称:BM)

それぞれの業務をくわしく見ていきましょう。

プロパティマネジメント(PM)とは

PMは物件管理のなかでも「ソフト面」の業務です。主なメニューは次の通りです。

  • 入居者募集・内見希望者の対応・入居希望者の審査・入退去の立会いと手続き ・入居者のクレーム対応・周辺住民とのトラブル対応 ・未収家賃の督促など

ビルマネジメント(BM)とは

BMは物件管理のなかでも「ハード面」の業務です。主なメニューは次の通りです。

  • 共用部の定期清掃・共用部の修繕・巡回管理・消防設備の点検・エレベーターの点検・ 受水槽の点検など

不動産管理会社の選び方の基本

PMとBM の業務内容を見比べるとわかりますが、もし、オーナーが所有している賃貸物件が区分マンションであれば、必要な管理業務はPMです。なぜなら、区分オーナーが共用部の清掃や巡回をご自身の責任で行う義務はないため、BMは不要だからです。

これに対して、所有している賃貸物件が一棟マンションやアパートなら、必要な管理業務は PMとBMの両方です。どちらが弱くても空室率が高まる原因になります。仮に、今使っている管理会社がPMに弱い場合、 PMに強い管理会社に替える、あるいは、PMの部分は信頼できる仲介会社にお願いするといった改善が必要です。

不動産管理会社の代表的な5タイプとは?

不動産管理会社

不動産管理会社は、それぞれ業務領域や得意分野が違います。にもかかわらず、看板や主要業務が一律で「不動産管理会社(賃貸管理会社)」となっているため、オーナーからすると、その違いがわかりにくいのが実状です。

良い管理会社を選ぶには、管理会社のタイプを知るのもポイント。ここでは代表的な5つのタイプを紹介します。5タイプのどれが良い悪いということではなく、求めるサービスを提供してくれる管理会社を選ぶことが重要です。

タイプ1:仲介業務がメインの不動産会社

賃貸仲介がメインの不動産会社が、管理業務も行なっているケース。同じ社内で仲介部門と管理部門が独立している場合、仲介部門が合間に管理も行っている場合などがあります。後者の場合、多忙な仲介会社だと管理業務が後手に回ることもあるでしょう。一方、集客力のある仲介会社ならPM重視のオーナーと相性がよい可能性もあります。

タイプ2:大手チェーンの不動産ブランド

総合的な不動産サービスを提供する不動産ブランドが、管理業務も行っているケース。大半の業務がマニュアル化されているため、一定品質のサービスを受けられる可能性が高いです。 ただし、サービスが均一化しがちなため、柔軟な提案や対応は受けられないこともあります。

タイプ3:地域密着の不動産会社

駅前で昔から続いている個人の不動産会社。仲介が主要業務という部分は、先に挙げた「仲介業務がメインの不動産会社」と共通します。限定されたエリアの特性や変化を熟知しているため、ハマれば効果的な入居者募集ができることです。ただ社長がご高齢の場合、ネットやSNSを活用した今の時代に合った集客ができないこともあります。

タイプ4:BMがメインの不動産管理会社

ビルメンテナンス(BM)をメイン業務にするタイプの不動産管理会社です。BMに特化した業者だけに、定期清掃・定期巡回・共用施設の点検などにおいては豊富なノウハウを持っていて安心できることが多いです。PMについては、自社のネットワークなどで行う、あるいは、客付け専門の仲介会社にアウトソースするなどのパターンがあります。BM に特化している分、 PMに弱いこともあります。

タイプ5:PMがメインの不動産管理会社

プロパティマネジメント(PM)をメイン業務にするタイプの不動産管理会社です。タイプ1の仲介業務がメインの不動産会社がPMサービスを強化させたケース、あるいは、不動産経営コンサルティング会社としてPMに特化しているケースなどがあります。

失敗しない管理会社の選び方!7つのチェックポイント

チェックポイント

ここに挙げる7つのチェックポイントを確認すると、ミスマッチの防止がしやすくなります

ポイント1:PM重視なのかBM重視なのか

先にお話ししたように、管理業務はPMとBMに大別されます。そして、どちらを重視しているかは、不動産管理会社によって違います。そのためまずは 「PM重視の管理会社なのか、BM重視の管理会社なのか」という基本的な部分を確認してください。

ポイント2:どんな管理サービスを提供してくれるのか

次に、不動産管理会社のサービス領域もしっかり把握しましょう。仮に、その管理会社がBM重視だとしても、どんな管理サービスを提供できるかは各社で違ってきます。例えば、定期清掃や巡回は社内でできるが、修繕は外注なので割高になる(あるいは対応できない)といった具合です。

ポイント3:基本契約にどんなサービスが含まれているか

不動産管理会社を探すときには、管理費の設定(一般的には家賃の3〜5%)に注目するオーナーが多いと思います。ただ、管理費の高い安いだけで管理会社を決めることはオススメできません。基本契約にどこまでの業務が含まれているかを確認することが重要です。オプションが多い管理会社に委託してしまうと、「管理料は割安だけど、結果的にコスト増になった…」というケースも考えられます。

ポイント4:客付け力があるか

入居者募集で集客力があるか、内見時の決定力があるかは、不動産管理会社を選ぶ際のポイントのひとつでしょう。それだけにこの部分は、丁寧にヒアリングすることが大切です。

ヒアリングの際は、下記5項目について確認しましょう

  1. 入居者募集は自社でやっているか、アウトソースしているか?
  2. 集客を自社で行っている場合、どのような方法で募集しているか?
    (例:仲介店舗があるのか、あるとしたら何店舗あるのかなど)
  3. 集客をアウトソースしている場合、どのような仲介会社に依頼しているか?
    (例:何社の仲介会社と関係が深いのか、どのエリアに強い仲介会社なのかなど)
  4. 空室発生から入居者付けまでの平均的な期間はどれくらいか?
  5. 広告料(AD)はどれくらい必要か?

ポイント5:対象エリアに強いか

不動産管理会社が得意としている対象エリアは、地域名や駅名などで具体的に確認しましょう。例えば「東京に強い」「千葉に強い」といった漠然としたエリアではなく、「品川・大田区エリアに強い」「市川・船橋エリアに強い」といったところまでヒアリングするのが理想です。この部分の確認を怠ると、ミスマッチの原因になります。

ポイント6:不利な契約になっていないか

契約時に交わす「管理委託契約書」の中身をチェックすることも、不動産管理会社の選び方のポイントです。具体的には、事前に「管理委託契約書」のフォーマット(文面)をもらって、すべての項目をチェックすべきです。とくに重点的にチェックしたいのは、(オーナー側から)管理委託契約を解除するときに「どれくらい前に告知する義務があるか」です。

一般的には、契約解除の1〜3カ月前の告知だと思いますが、それ以上に長い設定になっていることもありえます。あるいは、オーナーの不利益になる内容が盛り込まれている可能性もゼロではありません。契約後、トラブルに発展しないよう、不明点があれば必ず確認してください。

ポイント7:管理物件の戸数と入居率はどれくらいか

不動産管理会社を選ぶ上で、管理物件の戸数と入居率は絶対に確認しなければならない項目です。管理物件はその数が多いほど、取引しているオーナーが多い証でもあるので安心感があります。入居率はエリアによって変わってきます。東京都の人気エリアであれば98%台、99%台というのが一般的でしょう。一方、人口減少が顕著なエリアでは80%台、それ以下ということも考えられます。対象エリアの他の管理会社との比較で判断しましょう。

不動産管理会社の選び方の手順:検索方法から引き継ぎまで

引き継ぎ

最後に、新規で不動産管理会社を選ぶとき、あるいは、管理会社を変更するときの具体的な手順についてです。ここで紹介する5ステップの手順で管理会社選びを進めれば効率的。オーナーの負担を最小限に抑えられます。

ステップ1:対象エリアをキーワードにネット検索

ひと昔前なら不動産管理会社探しは、地域メディアや電話帳などで行うことが多かったでしょう。最近は、ネット検索で管理会社を探す人がほとんどだと思います。効率的な管理会社探しの方法は、以下のようなキーワードでネット検索をすることです。

  • エリア名+管理会社
  • エリア名+不動産会社
  • エリア名+仲介会社

まずは「管理会社」のキーワードで検索してみて、ヒット数が少ないなら「不動産会社」や「仲介会社」などのキーワードでも検索してみます。エリア名は物件のある最寄り駅や市・区などに設定するのが無難です。

ステップ2:複数の管理会社を候補にする

不動産管理会社の少ないエリア以外は、複数の管理会社を候補にするのが得策です。いくつかの管理会社の平均稼働率、委託管理料、サービスメニューなどを比較することで自身に合うところを選びやすくなります。

ステップ3:候補の不動産管理会社を絞り込む

候補の不動産管理会社がピックアップできたら、各社に対して電話やメールなどで簡単な質問をしてみましょう。管理会社を探していると伝えた上で、「そもそも新規で物件管理が可能か」「BMとPMどちらを得意にしているか」など基本的な質問をしてみましょう。

ステップ4:直接ヒアリングを行う

ステップ3で印象のよかった不動産管理会社を直接ヒアリングします。前項であげた7つの質問をぶつけて、各社の特徴や強みをしっかり把握した上で最終判断をしましょう。なお、信頼できると感じた管理会社でも、契約書の事前確認は必須です。オーナーに不利な内容が盛り込まれている場合、契約を再考した方がよいでしょう。

ステップ5:不動産管理会社との引き継ぎ

現在、契約をしている不動産管理会社がある場合、業務の引き継ぎに神経を使わなければなりません。引き継ぎでトラブルが発生すると、入居者に迷惑をかけてしまいます。

まず委託契約書で設定されている期限に契約解除を伝えます。その上で、現在取引している管理会社が気持ちよく引き継ぎができるよう配慮することも大切です。契約解除の理由をどう伝えるか、新規の管理会社に直接引き継ぎをしてもらうかなどについては、現在の管理会社とオーナーの関係性を考慮して慎重に判断するのが望ましいです。

まとめ

不動産管理会社は賃貸経営の生命線といえる重要なビジネスパートナーです。にもかかわらず、成り行きで管理会社を決めるケースは多いです。例えば、「物件売買を仲介してくれた不動産会社になんとなく委託した」「親の代から付き合っている不動産会社になんとなくお願いしている」といった具合です。

管理会社といっても実にさまざまなタイプがあります。そのなかからご自身が求めるタイプの管理会社を絞り込むことでミスマッチが防げます。7つのチェックポイントを参考にしながら、優秀な管理会社を見極めることが重要です。

管理会社選びには手間がかかりますが、優秀な管理会社を見つけることができれば、長期的な安定経営がしやすくなります