
ライフスタイルの変化により、マイホームや実家を空き家にしなければいけないこともあります。建物維持や住宅ローンの支払いのために、賃貸に出す決断はしたものの、どこの管理会社を選べばいいのかお困りではありませんか?
実は、管理会社にも良し悪しがあり、ただ管理を委託すればいいという訳ではありません。管理会社の選定に失敗してしまうと、いつまで経っても入居者が決まらず、維持費や固定資産税だけが重くのしかかってしまうことも。
本記事では、戸建て管理会社の活用方法と良い賃貸業者を選ぶためのコツについて解説いたします。
こんなときに戸建て管理会社は便利
人に家を貸す。一見、とても簡単なことに思えますが、不動産を貸すということは、本や洋服を貸すのとは訳が違います。賃貸不動産の法律である「借地借家法」では、貸主よりも借主の権利を厳守するよう定められています。
つまり、法律は賃借人の味方をしており、何も知らないでマイホームを賃貸に出してしまうと、場合によってはオーナーが不利益を被ることがあるのです。
このような事態にならないために、頼るべき存在が「管理会社」です。不動産のプロである管理会社は、貸主の事情を考慮したうえで、貸主に不都合がない賃貸借契約を締結してくれます。
では、どんなときに管理会社の存在が心強いと感じるのか。管理会社の存在がどのように有利になるのか、ケース別にみていきましょう。
急な転勤で家を空けることになった
急な転勤などで、一時的にマイホームを賃貸に出すことも可能です。安定した賃料収入があれば、住宅ローンの支払いが楽になりますし、人が住んでくれれば家が傷みにくくもなります。
しかし、問題は「自分たちが帰ってきたときに、スムーズに退去してもらえるか」という点。さらに、借主の家の使い方が悪いために「多額の修繕費用が必要になる」ことも不安の種ではないでしょうか。
このようなとき、管理会社は以下のように対応してくれます。
- 賃貸借契約期間に期限を設ける
- 借主に修繕費用の負担を請求する
法律では、貸主は借主に「家を使うから来月までに出て行ってくれ」と一方的に退去を求めることができません。前述したように、不動産の法律では借主の立場が保護されるからです。ただし、契約時に「定期借家契約」という期間限定の賃貸借契約を締結することも可能。そうすれば「2年経過したら出て行ってください」という貸主の事情を考慮した契約を結ぶことができます。
また、借主の使用状況が悪く多額の修繕費用が必要となった場合にも、管理会社が賃貸仲介に入り、借主に修繕費用の請求を行ってくれます。これにより、家を貸し出していたときについた傷や劣化部分などの修理費用を請求することができます。
不動産を相続して運用したい
相続により空き家を取得して、借家として不動産を開始することも可能です。不動産投資は莫大な初期費用を要しますが、相続不動産を利用すれば、新築より初期費用がかからずに済みます。
しかし、空き家となった戸建ての運用は、賃貸に適していない場合や多額の修繕費用が必要になることも。人に貸すとなると、また違った視点で建物を見直さなければいけないのです。
このようなとき、管理会社は以下のように対応してくれます。
- 賃貸に適しているかの判断
- 修繕箇所の調査や業者の手配
まずは、空き家が賃貸に出せる状況かどうかの現状把握が必要です。劣化状況や需要を確認したあと、賃貸に出す場合に必要なことをアドバイスしてくれます。また、空き家のどの部分を修繕すべきか、調査したうえで、必要な業者に手配もかけてくれます。
空き家を知人に貸すことになった
所有している空き家を知人に貸すという方法もあります。身内や友人を一時的な仮住まいさせるために、家賃不要もしくは賃料を安く設定し、空き家を貸すケースは少なくありません。
しかし、破格の家賃で知人に空き家を貸すと「出て行ってほしいのに出ていかない」「家賃の支払いがルーズになった」というトラブル発生も懸念されます。
このようなとき、管理会社は以下のように対応してくれます。
- 賃貸借契約書の作成
- トラブルの仲介
賃貸借契約書を作成してもらうことで、予め「家を貸すルール」を取り決めます。このルールを破った場合は、何らかの責任を負うよう記載し、実際にトラブルが発生したら管理会社に入ってもらうことが可能です。
近しい関係だからこそ発生してしまう問題。こういったトラブルを避けるためには、管理会社のような第三者に入ってもらうほうが賢明です。
戸建て管理会社がやってくれること
家を誰かに貸すときは、トラブル防止のために管理会社を間に入れた方がよいです。
では、管理会社に戸建て管理を委託すると、どんな業務を請け負ってくれるのでしょうか。ここからは、管理会社がやってくれる具体的な業務について、ご紹介いたします。
入居者募集業務
賃貸運営は、入居者なくしては始まりません。管理会社は、入居希望者を探すところから始まり、契約を決めるまでの「入居募集業務」を請負ってくれます。
入居者募集の業務内容は以下の通りです。
- 投資物件の宣伝や広告(チラシ作成やウェブサイト掲載)
- 入居希望者を物件へ案内する
- 家賃交渉の調整
- 賃貸借契約の締結
- クレーム対応
- 退去や契約更新の手続き
入居者募集の業務について
住んでくれる人がすでに見つかっている場合は不要ですが、空室である場合にチラシやウェブサイトなどで、入居者を募ります。入居者が見つかれば、賃貸借契約を交わし、退去まで入居者の管理を行ってくれます。
戸建て賃貸は、ファミリー層が好んで住む物件であるため、1度契約が取れれば長期間住んでくれる可能性が高い傾向にあります。しかし、ファミリー層は住環境を慎重に決断するという特徴もあるため、戸建住宅の良い部分をアピールしてくれる宣伝力がポイントになります。
入居者募集の業務の注意点
ちなみに、入居者募集業務は管理というよりも仲介業に該当する仕事です。そのため、すべての管理会社がこの入居者募集業務を請け負っているわけではありません。管理を依頼するときは、仲介業も請け負ってくれるかどうかを確認しましょう。
建物管理業務
管理会社は、建物が損傷したときの修繕業務やメンテナンスを実施してくれます。転勤などで遠方に引っ越す場合は、定期的に家を見に行くことができませんので、こうした建物管理業務は頼もしく感じるでしょう。
建物管理の業務内容は以下の通りです。
- 修繕箇所の調査
- 空室物件の見回り
- 業者の発注
- 巡回清掃
建物管理業務について
建物に修繕すべき箇所があった場合、業者に修繕依頼の手配をかけてくれます。また定期的に建物を見回り「敷地内に不法投棄はないか」「建物や設備に異常はないか」など、点検や物件確認するのも管理会社の仕事です。入居者募集依頼をしている場合、入居者が決まらないときは、空室となった建物を清掃したり、敷地内の雑草を処分したりしてくれることもあります。
建物管理業務の注意点
定期的に建物を見回り、異常や劣化がないかをチェックしてくれます。戸建て管理はアパートや賃貸マンションのように部屋数が限定されているため、建物は自主管理とするオーナーも少なくありません。しかし、収益物件が遠方にある、大家として身バレすると不都合が生じる場合などは、管理会社に動いてもらった方が安心できるでしょう。
家賃管理業務
家賃や修繕費など、お金に関する業務を請け負ってもらうことができます。お金の受け渡しはクレームに発展しやすいデリケートな問題。「家賃の振り込みが遅れた」「滞納が続いている」など、スムーズに家賃が支払われない場合、管理会社に集金業務を依頼することができます。
家賃管理の業務内容は以下の通りです。
- 家賃の入金
- 滞納家賃の督促
- 原状回復費用の請求
家賃管理業務について
家賃管理業務は毎月の家賃を、オーナーの口座へ入金する業務。振り込みを促し、万が一滞納があった場合は、家賃を振り込むよう督促してくれます。
また、退去時には入居者が故意に損傷させた部分の修繕費用請求も請け負ってくれます。退去時の修繕費用負担は、責任の有無を問いにくいため、トラブルに発展しやすい問題のひとつ。管理会社は国が取り決めた「原状回復ガイドライン」というマニュアルを基に費用を割りだし、然るべき負担額を借主に請求してくれる頼もしい存在です。
家賃管理業務の注意点
家賃管理業務は、管理会社ではなく保証会社が請け負うケースもあります。保証会社は、借主の連帯保証人になる存在。借主が家賃を滞納した場合、保証会社が借主にかわり家賃を振り込んでくれるうえ、未払い分の家賃の督促を行ってくれます。ただし、保証会社が間に入ることで、家賃滞納リスクは減りますが、保証会社に費用を支払う分、家賃収入が下がる可能性もあります。
戸建て管理会社の選び方
管理会社は、不動産投資初心者にとって、心強い存在です。はじめて賃貸不動産経営をする場合であったり、不動産物件が遠方にあったりする場合、専門的な知識を持って自分の代わりに不動産を運用してくれます。
しかし、管理会社にも良し悪しがあるため、管理やサービスがずさんな業者に依頼してしまうと「契約金以上の働きをしてくれない」「入居者が決まらない」という問題も浮上します。
では、自分たちの大切な家を正しく運用してくれる管理会社は、どうやって見極めればいいのでしょうか。ここからは、戸建て管理会社の選び方についてご紹介いたします。
宣伝力があるかどうか
賃貸募集業務を行っている管理会社を探すときは「宣伝力」の有無を見極めましょう。宣伝力は、入居者を見つけるために必要な能力。この宣伝力がなければ、いつまでたっても空室が埋まることはありません。
宣伝力を見極めるためには、以下の点に注目してください。
- 不動産検索サイトに多くの写真を掲載している
- チラシ掲載情報が的確かつ迅速
今では当たり前のようにウェブサイトを運営している不動産会社がほとんどですが、掲載情報が常にアップデートされているか、キレイな写真が掲載されているかをチェックしてみてください。入居者が「住みたい」と思える情報を提供していないのであれば、物件を宣伝しようという意欲が伝わりません。
また、チラシは物件宣伝に欠かせない広告媒体。依頼してからチラシ作成までのスピードは早いか、また掲載されている物件情報はオーナーの希望通りの条件かなどを確認してみてください。
提案力があるかどうか
提案力とは、修繕すべき部分が出た、あるいは空室が続いたときに「こうした方がおすすめですよ」という運用方法の提案のことです。不動産投資実績が少ないオーナーにとって、プロの提案は資産維持のために欠かせないもの。この提案力がなければ、収益アップどころか資産価値が落ち続けてしまう恐れもあります。
提案を見極めるためのポイントは、以下の通り。
- 改善提案の内容が具体的
- 賃貸担当者の連絡回数が多い
改善提案とは、例えば「敷金礼金を下げたほうがいい」「水回りを交換した方がいい」など、入居者獲得につながるためのアドバイスのこと。不動産の動向や付近の賃貸需要を考慮し、リフォームや家賃の改定など、オーナーとして何をすべきかを具体的に提案してくれる業者は、良い管理会社と言えます。
また、修繕対応の実施や入居者の対応をした前後に、オーナーに対して「報連相」があるかどうかもチェックすべきポイント。オーナーから連絡の催促をしなくても、定期的に連絡をくれる会社は、安心して管理を任せることができます。
健全な営業をしているかどうか
いわゆる「悪徳業者でないか」を確認する必要があります。依頼予定の管理会社が、健全な営業をしているかどうかは、「賃貸管理登録事業者である」かどうかに着目してみてください。
賃貸管理登録事業者とは、国が保証している健全事業者の証。厳しいチェック項目をクリアした不動産業者に与えられる認定書のようなものです。管理会社が、この賃貸管理登録事業者に登録してあるかどうかは、国土交通省のウェブサイトから確認できますので、ぜひチェックしてみてください。
管理会社に委託するかどうか迷った時は
管理会社の業務内容について、ご説明してきました。多くの面でメリットがある管理会社ですが、戸建賃貸経営に限っては、「戸建て賃貸の管理戸数が少ない」「クレーム数が少ない」「契約期間が長い」という点から自主管理を選択するオーナーが多い傾向にあります。
管理会社の必要性は感じているものの、委託管理するかどうか決めかねている人は、以下の点を踏まえて依頼するかどうか判断してみてください。
入居者募集だけを依頼するという手も
自主管理する予定でも入居者にあてがない場合は、入居者募集管理のみを依頼するという手もあります。
賃貸管理を行っている不動産会社と媒介契約を結び、入居者をさがしてもらうことも可能です。この場合、入居者がみつかれば、依頼した不動産会社に仲介手数料を支払えばよく、毎月の管理費用はかかりません。賃貸契約の場合、仲介手数料は家賃の1カ月分です。入居者が見つかれば、あとはオーナーが物件を管理しながら運営していきましょう。
物件が遠方にある場合は管理委託した方が無難
物件が遠方にある場合は、自主管理よりも委託管理をおすすめします。なぜならば、賃貸運営は、できるだけ早く現地に行けることが重要なポイントだからです。
例えば、入居者からクレームが発生した場合は、できるだけ早く現地に行き事実確認をすべきです。修繕するにしても、現場を確認しなければどの業者に手配をかければいいか判断できません。また空室期間が長いときは、敷地内や室内に異常がないか、確認する必要があります。
もしも、気軽に物件に向かうことが出来ない距離に住んでいる場合には、管理会社に対応してもらった方が安心かつ安全に運営できます。物件までの距離も考慮し、管理を委託するかどうか、再検討してみましょう。
戸建ての管理を委託する前に確認しておくべきこと
管理会社にも個性があり、それぞれ経営方針が異なっています。オーナーの運営方針と管理会社の経営方針に温度差が生じてしまうと「管理体制に不満がある」「こんなはずじゃなかった」など、ガッカリしてしまうことも。
管理を委託するときには、これから紹介する以下の点をよく確認し、納得できた管理会社を頼るようにしましょう。
管理会社の運営方針と自身の経営方針がマッチしているか
管理会社の運営方針とは「契約業務内容」のこと。それに対して、自身の経営方針とは「どのように運用していきたいか」です。例えば、入居者を探してほしいのに、依頼した管理会社が募集業務を行っていなければ、入居者を探す手間が増えてしまいます。
また、設定した家賃よりも低い家賃で募集されたり、空室時の清掃回数が少なかったりなど、様々な点で「思い違い」が生じてしまうと、やがて大きな不満へと繋がっていきます。
このような事態に陥らないためには、契約前に管理会社の運営方針をよく聞くこと。自身が必要としている業務を請け負ってくれるのか、業務の内容や実施回数はどれくらいなのか、納得いくまで話し合ってみてください。
管理会社が物件所在地の近くにあるかどうか
前項で「できるだけ早く現地に行けることが重要なポイント」と解説いたしました。そのため、管理会社が物件所在地の近くにあるかどうかは、しっかり確認しましょう。
管理会社と物件の距離が遠いほど、クレームや清掃対応に時間がかかります。物件へ立ち寄る回数が極端に減ってしまえば、管理がおざなりになってしまう可能性も否定できません。
管理会社の営業所の住所は、直接会社に問い合わせるか、ウェブサイトでチェックしてみましょう。同市や同町内にあることが望ましいですが、それよりも遠くなってしまう場合には、管理会社の見回り回数や、物件に駆けつけてくれる体制が整っているかどうか確認してみてください。
管理会社の管理物件数が多いかどうか
実績が多い管理会社は、知識が豊富であり信頼が厚い会社と言えます。管理会社のこれまでの管理実績や現在の管理物件数が多いかどうかを確認してみましょう。
賃貸住宅には、建物の柵や窓、敷地内のぼり等に管理会社の名前が記載されています。付近の賃貸物件を見渡し、どの管理会社の名前が多いか、大まかでいいのでカウントしてみてください。人気のある管理会社は、管理戸数がそれなりにあるはずです。
まとめ
法律が深く関わる賃貸運用は、不動産投資初心者にはハードルが高く、下手をすれば大きな損失に繋がります。また、身内や知人など、近しい間柄に家を貸す場合、どうしても契約がルーズになりがちです。
戸建て運用は、管理戸数が少なくても、不動産投資に変わりはありません。運営するからには、管理者としての責任が重くのしかかります。管理会社は、オーナーの責任や負担を軽減してくれる頼もしい存在です。
戸建て管理に何らかの不安をお持ちの場合は、管理会社に相談してみてください。