
賃貸物件を購入して賃貸経営を始める人や自主管理から委託管理に切り替える人、管理会社の変更を検討している人の中には、管理会社を選ぶポイントを知りたいと考えている人も多いと思います。
管理会社選びに失敗すると、賃貸経営に支障が生じるため、安定した賃貸経営を行うためにもポイントを押さえながら管理会社を選ぶことが重要です。
この記事では、失敗しない管理会社の選び方について解説します。
良い管理会社をチェックするために見るべきポイント
賃貸物件を購入したからと言って、安定した家賃収入が保証されているわけではありません。物件オーナーは入居者募集や入居者の管理、建物の管理などの管理業務を行いながら安定した家賃収入の確保を目指します。
管理業務は管理会社に委託することも可能です。管理会社に委託すれば、専門家のサポートを受けられるため、管理業務にかかる手間と時間を省くことが可能です。
そのため、1から賃貸経営を始める人や自主管理を行っている人の中には、管理会社への委託を検討している人も多いと思います。しかし、管理を委託するのはどこでもいいというわけではありません。
管理会社選びの失敗は経営に支障を生じさせる可能性があるため、いい管理会社を選ぶことが安定した賃貸経営を行う上でのポイントです。管理会社を変更する際も同様です。
いい管理会社を選ぶポイントは、以下の6つが挙げられます。
- 管理物件の入居率が高い
- 仲介の部署を持っている
- 管理委託費の設定が高くない
- 担当社員のレスポンスが早い
- 管理の業務内容が幅広い
- 空室対策への提案力が高い
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
管理物件の入居率が高い
入居率が低ければキャッシュフローの悪化によって経営の継続が困難になります。そのため、管理会社を選ぶ際は、管理物件の入居率を高く維持できている会社を選ぶことが重要です。
管理会社のホームページには管理物件の平均的な入居率が書かれているところもありますが、管理物件数が多ければ物件差が曖昧になるため、それだけでは情報が足りません。管理会社に質問してエリアや築年数、規模などの条件が近い物件の入居率を確認することが重要です。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会日管協総合研究所が2020年6月に公表した「第23回賃貸住宅市場景況感調査 日管協短観」によると、2019年下期の各地域の入居率推移は以下の通りです。
- 首都圏:95.6%
- 関西圏:94.2%
- その他:92.6%
- 全国:93.6%
平均から考慮すると、平均的な入居率が95%以上であれば、入居率の高い管理会社と言えるでしょう。
入居率を高く維持できている管理会社は客付け力が高く、安定した賃貸経営が期待できます。また、管理物件の入居率だけでなく、不動産ポータルサイトの活用の有無、活用している場合は掲載情報も確認します。
最近はネットで物件情報を探す人が増えており、不動産ポータルサイトの活用は不可欠です。しかし、不動産ポータルサイトに登録しているだけでは他の物件と差別化を図れません。
そのため、まずは管理会社の管理物件をホームページからいくつかピックアップして検索し、表示された不動産ポータルサイトの写真が多いかどうか、物件紹介が分かりやすいかどうかをチェックします。管理会社に物件情報を掲載する時のこだわりを確認するのも重要です。
説明が不足している物件よりも写真が豊富で説明が丁寧な物件の方が良い印象を与えるため、安定した需要の確保が期待できるでしょう。
仲介の部署を持っている
管理会社が行う業務は、入居者募集や入居者の管理、建物の管理と大きく3つに分類されます。管理会社の中には、入居者と建物の管理のみを行っているところもありますが、仲介の部署を持っていて入居者募集も行っている管理会社を選ぶことが重要です。
仲介の部署を持っておらず、入居者と建物の管理のみを行っている管理会社に委託した場合、入居者募集を自分で行うもしくは入居者募集のみ他の管理会社に委託しなければなりません。その結果、手間と費用が無駄にかかるので非効率的と言えます。
普段から入居者と建物の管理を手掛ける管理会社がそのまま入居者募集も行う場合は、物件の特徴をよく把握しているため、効率良く空室を埋められるでしょう。
管理委託費の設定が5%程度
管理会社に委託する場合は、物件オーナーは管理委託費を支払いますが、管理委託費の上限は法律で定められていないため、管理会社によって設定が異なります。そのため、管理委託費の設定が高くない管理会社を選べば支出を抑えることが可能です。
業務内容が他の管理会社よりも充実していて管理委託費が高く設定されているのであれば特に問題ありません。しかし、業務内容が同じであるにもかかわらず高く設定されている場合は、無駄な支出が増えることになるので注意が必要です。
管理委託費を家賃の5%程度に設定している管理会社が多いことから、それを1つの基準として管理会社を選びましょう。
担当社員のレスポンスが早い
管理会社を選ぶ際は、担当社員のレスポンスが早いかどうかを確認しておくことも重要です。管理会社の担当社員の中には、オーナーや入居者から問い合わせがあってもすぐに対応しない人もいます。
そのような担当社員に管理業務を任せている場合、入居者満足度の低下によって退去に至る、対応が遅れたことが原因で無駄な支出が増える可能性もあるので注意が必要です。
そのため、管理会社を選ぶ際は、返答に要する時間(不在時を除いて最低でも営業時間内)、報告や連絡などの頻度(最低でも月1回の月次報告)、担当社員が不在時のサポート体制などを確認しておくことも重要と言えるでしょう。
管理の業務内容が幅広い
管理の業務内容はどの管理会社に委託しても同じだと思っている人もいるかもしれませんが、そうとは言い切れません。管理会社によって管理の業務内容が異なるため、手厚いサポートを受けるには管理の業務内容が幅広い管理会社を選ぶことが重要です。
管理方法はPMとBMの2つに分かれており、PMとはプロパティマネジメントの略で、オーナーから依頼を受けた管理会社が契約締結、賃料回収や督促、クレーム対応などソフト面のサポートを行います。
BMとはビルマネジメントの略で、オーナーから依頼を受けた管理会社が日常清掃、設備管理や点検・巡回などハード面のサポートを行うといった明確な違いがあるので覚えておくと良いでしょう。
「クレーム対応や日常清掃などが含まれていない」と後で気づいた場合は、その部分を追加で委託する、他の業者に委託することになるため、無駄な支出が増えてしまいます。
一般的な管理業務が全て含まれているかどうかだけでなく、アプリの導入や24時間の窓口など入居者満足度が高まるようなサポートが含まれているか確認しましょう。
空室対策への提案力が高い
賃貸物件の空室期間が長くなった場合、キャッシュフローが悪化して経営の継続が困難になる可能性があります。空室対策への提案力が高い管理会社に委託すれば、空室リスクを少しでも抑えることが可能です。
管理会社の中には、空室対策として安易に家賃の引き下げを提案してくる管理会社もいます。家賃を引き下げることで空室が埋まる可能性は高まりますが、退去するまで引き下げた家賃が適用されるので家賃収入は減少します。
家賃収入の減少はオーナーにとって致命的であるため、安易に家賃の引き下げを提案してくる管理会社はあまりおすすめしません。
フリーレントという無料で住めるお試し期間を設ける、敷金や礼金を下げるといったように、オーナーの収入を考慮した空室対策を提案してくれる管理会社を選ぶことも重要なポイントと言えるでしょう。
自主管理と委託管理に向いている人とは
賃貸経営を行っているオーナーの中には、自主管理にすべきか委託管理にすべきか悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
あまり深く考えずに管理方法を選んだ場合、経営に支障が生じる可能性もあるため、どちらが自分に合っているのかをよく考えてから管理方法を選ぶことが重要です。
自主管理に向いている人
自主管理は自分で管理業務を行うので手間と時間はかかりますが、管理委託費を抑えることが可能です。そのため、賃貸経営で得られる収入を増やすために、自主管理を検討している人も多いと思います。
自主管理に向いている人の条件として、以下の4つが挙げられます。
- 専業大家として取り組める
- コミュニケーション能力が高い
- 物件への思い入れが強い
- 自宅近くの物件を所有している
それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。
専業大家として取り組める
自主管理では全ての管理業務を自分で行わなくてはならないため、時間と手間がかかります。そのため、専業大家として取り組める人は自主管理に向いていると言えます。
例えば、定年退職後に賃貸経営を始めた人や脱サラして家賃収入のみで生活する人などは、管理業務に取り組む時間を十分に確保できることから、自主管理でも全く問題ないでしょう。
コミュニケーション能力が高い
管理業務には入居者の管理も含まれているため、入居者との付き合いが生じます。そのため、コミュニケーション能力が高い人が自主管理に向いていると言えます。
人付き合いが苦手な人が自主管理を行った場合は、入居者と良好な関係を築くことができず、些細なトラブルでも大事になることも珍しくありません。
入居者の話を傾聴できる、入居者目線で物事を判断できるといったコミュニケーション能力が高い人は入居者と良好な関係を築けることから、トラブルを最小限に抑えながら管理を行えるでしょう。
物件への思い入れが強い
自宅に思い入れがあるのと同様、自分の所有する賃貸物件に対する思い入れが強いオーナーも多いのではないでしょうか?そのような物件への思い入れが強いオーナーは、委託管理よりも自主管理の方が向いていると言えます。
委託管理の場合、オーナーは間接的に物件に関わることになるため、物件と関わる機会は多くありません。
家賃回収時に入居者とコミュニケーションを取って様子を確認したい、定期的に物件を訪れて問題の早期発見・早期改善に努めたいなど、物件への思い入れが強いオーナーにとっては委託管理は管理会社の対応が物足りないと感じる可能性が高いと言えます。
「自分の所有する物件は自分で管理したい」と思い入れが強いオーナーの場合、委託管理より自主管理の方が楽しみながら賃貸経営を行えるでしょう。
自宅近くの物件を所有している
設備の故障やクレームが生じた場合、すぐ物件に駆け付けなければならないこともあります。自宅から物件が近ければ速やかに対応できるため、自宅近くの物件を所有しているオーナーは自主管理に向いていると言えます。
遠く離れた物件でも自主管理は可能ですが、スムーズな対応を実現するにはオーナーの負担が大きくなるので要注意です。
物件への思い入れが強い人が自主管理に向いているのと同様、自宅近くの物件を所有していて積極的に管理に携わりたい人には自主管理がおすすめです。
委託管理に向いている人
委託管理は管理委託費を管理会社に支払うので家賃収入が減少しますが、管理の手間と時間を省くことが可能です。そのため、管理の手間と時間を省きながら賃貸経営を行うために、委託管理を検討している人も多いと思います。
委託管理に向いている人の条件として、以下の4つが挙げられます。
- 兼業で時間に余裕がない
- プロに管理運用を任せたい
- 複数の物件を運用したい
- 自宅から離れた物件を所有している
それぞれの条件について詳しく見ていきましょう。
兼業で時間に余裕がない
物件オーナーの中には、サラリーマンとして働きながら、自営業の傍ら賃貸経営を行っている人も多いと思います。上記のように兼業で管理に必要な時間を十分に確保できない人は、委託管理の方が向いていると言えます。
時間を十分に確保できないにもかかわらず自主管理を選択した場合は、入居者満足度の低下が原因で空室が増加する、対応が遅れて無駄な支出が増える可能性があるので注意が必要です。
委託管理であれば、管理会社が管理を全て行ってくれるため、本業に専念しながら賃貸経営を行えるでしょう。
プロに管理運用を任せたい
管理をオーナー自らが行うことも可能ですが、管理のプロである管理会社よりもサポート面で劣ってしまいます。そのため、プロに管理運用を任せたいと考えている人は、委託管理の方が向いていると言えます。
管理をオーナー自らが行う場合は、ノウハウが蓄積されておらず、安易な決断が原因で経営に支障が生じる可能性があるので注意が必要です。
しかし、委託管理であれば、蓄積されたノウハウから適切な決断を行ってくれるので安定した賃貸経営につながりやすいと言えるでしょう。
複数の物件を運用したい
収入を増やすために複数の物件の運用を考えている人も多いと思いますが、自主管理の場合は負担が増えることから継続が容易ではありません。そのため、複数の物件の運用を考えている人は、委託管理が向いていると言えます。
物件が増えると、管理会社に支払う管理委託費も増えますが、物件管理にかかる手間と時間は省くことが可能です。
脱サラして賃貸経営の収入のみで生活したい人は、複数の物件の運用が不可欠なので、委託管理を視野に入れた方が良いと言えるでしょう。
自宅から離れた物件を所有している
安定した賃貸経営を行うために自宅から離れた将来的に需要の期待できるエリアの賃貸物件を所有している人もいると思います。自宅から離れた物件は自主管理が困難なので、自宅から離れた物件を所有している人は、委託管理に向いていると言えます。
自主管理は自宅近くの物件に限られますが、委託管理では制限がありません。経営リスクを考慮しつつ需要が期待できる遠方の物件に積極的に投資したい人は、委託管理を視野に入れることをおすすめします。
自主管理から委託管理に切り替えるメリット
現在自主管理を行っているオーナーの中には、管理委託費を支払ってまで管理会社に委託するメリットがあるのか気になっている人もいると思います。自主管理から委託管理に切り替えるメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 管理にかかる時間と手間を省ける
- プロのノウハウを学べる
- 遠方の物件も所有できる
- 入居者満足度が向上する
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
管理にかかる時間と手間を省ける
自主管理の場合、365日物件の入居者に対応しなくてはなりません。土日や祝日も関係ないので兼業オーナーの場合には肉体的な負担が重くのしかかります。また、クレームや家賃滞納への対応には精神的な負担も伴います。
しかし、委託管理であれば、管理業務を全て管理会社がオーナーの代わりに行ってくれるので肉体的・精神的な負担を伴わずに賃貸経営を行うことが可能です。
本業が疎かになることによって自営業の場合は会社の売上が減少する、サラリーマンの場合は減給または会社をクビになるといったリスクを抑えられるため、安定した賃貸経営を行えるでしょう。
プロのノウハウを学べる
物件オーナーが独学で管理について学んだとしても、なかなかプロのノウハウには勝つことができません。委託管理を選んだ場合、プロのノウハウを身近で学ぶことが可能です。
例えば、入居者のクレーム対応や空室対策、入居者の選び方などで対応や判断を誤った場合、経営に支障が生じます。管理会社であればどのように対応するのかという賃貸経営を行う上で必要なノウハウを全て吸収できれば、自主管理を行うことになった場合に役立ちます。
自主管理から委託管理、委託管理から自主管理への切り替えはいつでも行うことが可能です。そのため、まだノウハウが蓄積されていない場合、委託管理でプロのノウハウを学んでから、時間的な余裕ができてから委託管理に切り替えるのも選択肢の1つと言えるでしょう。
遠方の物件も所有できる
自主管理にこだわっていると、何かトラブルが生じてもすぐ駆け付けられる自宅からの距離が近い物件に限られてしまいます。しかし、委託管理であれば、遠方の物件も所有できるため、物件の選択肢が大幅に増加します。
近場の物件に限られてくると、利回りが低い、築年数がかなり経過しているなど、条件の悪い物件を選ぶことで賃貸経営のリスクが高まる可能性があるので要注意です。
委託管理ではより好条件の物件を選択できることから、リスクを大幅に抑えながら賃貸経営に取り組めるでしょう。
入居者満足度が向上する
管理の知識が豊富なオーナーが自主管理を行う場合は問題ありませんが、知識のほとんどないオーナーが行う場合は入居者満足度の低下による退去者の増加で経営に支障が生じる可能性があります。
しかし、委託管理であれば管理のプロである管理会社のサポートを全面的に受けられるため、入居者満足度が向上します。
入居者満足度の向上は、長期入居や退去後の空室期間短縮の効果が期待できるため、安定した賃貸経営を行う上で必要不可欠です。
自主管理でうまく対応できておらず、入居者満足度が低いと感じている場合は、自主管理から委託管理に切り替えた方が良いでしょう。
まとめ
賃貸物件の管理のプロである管理会社。管理会社に管理を任せていれば、安定した賃貸経営を行えると思っているオーナーも多いかもしれませんが、管理会社選びに失敗すると賃貸経営に支障が生じる可能性があるので注意が必要です。
委託管理は、全てのオーナーに向いているというわけではありません。自主管理に向いているオーナーもいるため、どちらが自分に向いているのかを事前に確認しておくことも重要です。
また、現在自主管理を行っているオーナーの中には、管理委託費を支払ってまで委託すべきか悩んでいる人も多いと思います。自主管理を委託管理に切り替えるメリットの方が大きいと感じたオーナーは、自主管理から委託管理に切り替えることをおすすめします。