
自主管理をするオーナー向けに入居者募集のコツをご紹介します。ベテランオーナーも新人オーナーも役立つ内容です。記事の冒頭では、空室発生時の3つの基本業務にフォーカス。後半は、業務のなかの最重要課題である「客付け会社の営業」をいかに効果的に行うかについてレクチャーします。
自主管理オーナーの入居者募集時の3つの基本業務
まずは、自主管理オーナーの入居者募集時の基本業務を確認しましょう。
- 客付け会社に営業する
- 入居者募集中の看板を設置、点検する
- 知人にアナウンスする
これらは空室発生時に最低限やるべきこと。重要かつ緊急のタスクといえます。当然ながら、これらの業務を怠る、あるいは、速やかに実行しないと長期空室の原因になります。
タスク1.客付け会社に営業する
客付け会社とは、内見希望者を集客して成約に結びつくよう営業してくれる不動産会社(賃貸仲介会社)のことです。入居者から退去連絡が入った時点でオーナーが不動産会社に「どの部屋が、いつから空くか」などをお知らせ。これをきっかけに各不動産会社が入居者募集を開始します。このタスクは、入居者募集時の基本業務でもっとも重要度が高いので、次項以降でくわしく解説します。
タスク2.入居者募集中の看板を設置、点検する
賃貸物件の近所に住んでいる方や通行人のなかには、部屋探しをしている人もいるでしょう。そういった方々に敷地内または外観の「入居者募集中」の看板を通して、直接アプローチします。とくに交通量の多い道路に面した物件は効果的。募集看板には、問い合わせ先の電話番号やオーナーの名字などを併記するのが通例です。
すでに入居者募集中の看板を設置している場合は、色あせて見づらくなっていないか、通行人の目に付きやすい場所に設置されているかなどを点検してください。さらに、賃貸物件の注目度をアップする方法として、「入居者募集中」ののぼりを立てるのも有効です。
タスク3.知人にアナウンスする
所有する賃貸物件のターゲットにあてはまる知人がいれば、アナウンスしてみるのも手です。タイミングが合えば、即入居につながる可能性もあります。例えば、「隣人の騒音がひどいので、ちょうど引っ越しを考えていた」といったパターンです。また、声がけした知人経由で他の入居者を紹介してもらえる可能性もあります。
客付け会社(不動産)の開拓および管理方法は?
先に挙げた3つの基本業務のうち、集客効果が高いのは「客付け会社に営業をする」です。この部分を強化するには、客付けをしてくれる不動産会社の開拓・管理がマスト。その具体的な方法をご紹介します。
近隣の客付け会社の開拓方法
客付けしてくれる不動産会社の一般的な開拓方法は、物件の最寄り駅や近隣駅の仲介会社を1軒1軒、挨拶回りするというものです。その際、菓子折などを持っていくと印象に残りやすいという意見も目立ちます(※)。
※コロナ禍では直接訪問をする際、相手先に「訪問してよいか」を事前確認した方がよいでしょう。
ただ最近では、ネット検索でヒットした不動産会社に空室情報を流す方法を推奨する不動産投資家もいます。年配のオーナーからすると「面識のない不動産会社に、メールで空室情報を流して相手にしてもらえるだろうか」というご懸念があるかもしれません。しかし、不動産会社の営業は若い世代も多いため、面識がないオーナーからメール経由で依頼が来ても抵抗感がないこともあります。試す価値はあるでしょう。
物件周辺の不動産会社のネット検索方法は、以下のキーワード設定が考えられます。
- エリア名+不動産会社
- エリア名+仲介会社
- エリア名+賃貸会社
上記の「エリア名」の部分には、最寄り駅や市・区などを入れてみましょう。
主要駅近くの客付け会社の開拓方法
客付けしてくれる不動産会社を開拓する際は、近隣に目がいきがちです。視野を広げて、物件最寄り駅の沿線上にある主要駅も要チェックです。例えば、賃貸物件が千葉県と東京都の県境にある市川市にある場合、千葉県側なら船橋や松戸、東京側なら錦糸町・秋葉原・新宿の会社に勤務している人に利用される可能性があります。そのため、こういった沿線上の主要駅前にある仲介会社も、ネット検索して空室情報を送ってみる価値はあります。
客付け会社の効率的な管理方法は?
客付けしてくれる不動産会社のデータを予め一覧化しておくと、退去連絡があったときにスピーディに連絡できます。一覧化するときに網羅する情報としては、社名・担当者・電話・メールアドレスなどがあります。
管理ツールは、ExcelやGoogleスプレッドシートでもいいですし、こういったツールが苦手なオーナーは簡易的なメモ機能でもよいでしょう。いずれにせよ、目立つ場所にわかりやすくまとめられていれば十分です。
なお、不動産会社の一覧表は、オーナーにとって無形の財産というくらい価値のあるものです。一覧表の不動産会社の数が多いほど、賃貸経営をしていく上で有利になります。不動産会社の開拓を行う努力を積み重ねていきましょう。
入居者募集が始まった直後に効果的な5つのコツ
ここまで解説してきたように、入居者募集の鍵を握るのは不動産会社(客付け会社)といかに円滑なコミュニケーションをとるかという部分です。営業担当者のモチベーションを上げ、彼らが仕事をしやすい環境をつくれるかがポイントになってきます。
コツ1.マイソク作成に必要なデータを揃えておく
不動産会社は、物件情報をもとにマイソク(募集チラシ)を作成し、それをもとに集客をします。スムーズに作業しやすいよう、必要なデータをワンパッケージで支給するのがポイントです。支給するデータ例は、次の通りです。
- 間取り図や部屋の写真のデータ
- 周辺地図データ
- 主な住宅設備
- その他、マイソク作成に必要な基本情報
(退去日、入居可能日、物件概要など)
部屋の写真は、一眼レフで撮影するのが理想です。ただ最近は、スマホのカメラも高機能になっています。一眼レフがない方は、スマホカメラでの撮影でもポイントをおさえれば、仕上がりのよい写真が撮影可能です(水平に撮る、手ぶれをなくすなど)。
コツ2.客付け会社への広告料(AD)を活用する
不動産会社の営業担当は、人気の決まりやすい物件、あるいは、仲介料を多くもらえる家賃の高い物件などを優先して紹介するのが通例です。なぜなら、その方が効率的に稼ぎやすいからです。
オーナーが所有しているのが、このような営業担当に好まれる物件でない場合、彼らのモチベーションを高めるフックが必要です。このフックこそが「広告料(AD)」といえます。まずは、端的にどれくらいの広告料を設定すれば、優先的に仲介してもらえるのかをヒアリングしてみましょう。その上で適切な広告料を設定するのが賢明です。
コツ3.家賃・敷金・礼金の下限ラインをすり合わせておく
これはある程度、信頼関係ができている不動産会社に限定されるコツですが、内見をした見込客が価格交渉をしてきたとき、「どれくらいの範囲まで変更可能か」を営業担当と予めすり合わせておくのも手です。
営業担当が価格交渉の要件で電話連絡をしてきたとき、オーナーが忙しくて出られないことで機会損失になる可能性もあります。家賃・敷金・礼金などの下限ラインをすり合わせておけば、担当者の裁量で交渉を進められます。
コツ4.キーボックスを設置しナンバーを予め伝える
これも同様に、信頼関係ができている不動産会社に限られるコツですが、玄関鍵はキーボックスで管理し、そのナンバーを予め伝えておけば効率的です。玄関鍵の管理方法としては、内見希望者が現れた時点で、営業担当に鍵を渡すやり方もあります。しかしこれでは、オーナーが即対応できないときに機会損失になる可能性があります。キーボックスを設置しておけば、機会損失を確実に防げます。
コツ5.客付け会社への連絡のタイムラグをなくす
入居者から退去連絡が入ったとき、いかにスピーディに不動産会社に情報提供できるかも重要です。前述したとおり、不動産会社のデータを予め一覧化しておけば、退去予告があった直後にメール配信をすることも可能です。
逆に、不動産会社を一覧化したデータを作成していなければ、退去連絡があるたびに「連絡先はどこだっけ」と探し始めるところから始めなければなりません。これでは時間も手間もかかってしまいます。
入居者募集が長引いているときに効果的な5つのコツ
ここまでご紹介してきた入居者募集時のコツを実践しても、空室期間が長引いてしまうケースもあるでしょう。そんなときは発想を変えて、新たな打開策にチャレンジしていくべきです。
コツ1.入居者のコスト負担を減らす
入居者募集が長期化したとき、一番カンタンな対処法は「入居者のコスト負担を減らすこと」です。すなわち、家賃の値下げ、フリーレント、敷金・礼金なしなどです。ただし、「コスト負担を減らすこと」だけに頼れば、低利回り体質になって経営を圧迫する原因になりかねません。家賃の値下げなどは、周辺相場と照らし合わせながら、慎重に判断するのが賢明です。
コツ2.入居者に人気の設備を導入する
人気の設備を導入することも入居者決定力を高める効果的な方法です。人気の設備を導入することで、賃貸物件の競争力を高めることができます。注意点は、その時々の入居者ニーズに合った設備をリサーチして採用することです。毎年発表されている「入居者に人気の設備ランキング(全国賃貸住宅新聞)」のような情報を参考にしましょう。
コツ3.情報発信力を多様化させる
これは、本稿の冒頭で紹介した3つの基本業務(客付け会社に営業、看板設置、知人へのアナウンス)以外の方法で情報発信する方法です。一例としては、Facebook、LINE、TwitterなどのSNSをされているのであれば、タイムラインに物件情報を流すのもありでしょう。フォロワーが少なくても、そのなかの人脈の広い一人が起点となり、入居者を紹介してもらえる可能性もあります。
さらに、有料メディアを利用するのも一案です。セオリーは、賃貸物件メディアへの広告出稿です。それ以外にも、賃貸物件が所在しているエリアで配布されているフリマガに広告出稿する手もあります。
コツ4.補助金を使ってリノベーションしてみる
あらゆる手立てを試しても入居者が決まらないときは、リノベーションをして物件の価値を高める選択肢もあります。ただオーナーの立場になれば、反響が少ない賃貸物件にまとまったリノベーション費用を入れるのは抵抗があるケースも多いのではないでしょうか。
公的な補助金を活用しながら リノベーションするという方法があります。例えば、賃貸住宅を借りにくい住宅要配慮者(高齢者・障害者・低額所得者など)の入居登録を条件に工事費や設備費の一部を助成してくれる「新たな住宅セーフティネット制度(国交省)」や「東京ささエール住宅(東京都)」などが該当します。これらの制度を活用するのもよいのではないでしょうか。
※これらの制度は2020年10月現在に実施されているものです。
コツ5.管理会社に委託してみる
自主管理から管理会社への委託に切り替えた途端、空室が埋まるケースもあります。もちろん、管理会社へ委託すればその分、報酬がかかります。ただ、家賃の3〜5%程度の報酬で、不動産会社とのやりとりに加えて、入居者からのクレームや家賃督促などに対応してくれるなら「むしろ安い」と考えることもできます。だからこそ、大半のオーナーが管理会社を使っているのでしょう。
まとめ
ここでは自主管理のオーナーが、入居者募集を効率的に行うためのコツを解説してきました。改めて整理してみると、自主管理をするのにいかに手間がかかるかがわかります。一般的に言われているように、ビジネスパーソンや自営業者の副業で賃貸経営をする場合、自主管理は相当な負担です。手間を増やしたくない人は、管理会社にアウトソースするのが無難かもしれません。
これから先、人口減少が深刻化するなか、賃貸経営の競争率が高まっていくことが予想されます。生き残っていくには、優秀な管理会社の選択がカギになるでしょう。