大家さん必見!退去立会い時に見落としがちな場所を一覧にして解説

投稿日2020/11/18
更新日2020/11/18
退去

退去立会いは、修繕費用の負担割合を決めるために行います。オーナーと入居者とが現場に立会い、当事者同士で事実確認するために必要な場です。

ただし、今後の修繕費用の負担など、お金が絡んでくる退去立会いは、何かとトラブルが発生しやすい場でもあり、中には問題をこじらせ訴訟にまで発展したケースも少なくありません。

そこで今回は、退去立会い時に見落としがちな場所を一覧にして徹底解説いたします。退去時のトラブルを避けたい大家さんは必見です!

退去立会いするときの基礎知識と知っておくべき3つの注意点

原状回復

まずは、退去立会いするときの基礎知識と注意点を知っておきましょう

修繕費用の中には「入居者負担にできないもの」「立会い時に確認しきれないもの」「請求しにくいもの」などがあります。貸主側に非がないからと言って、何でもかんでも修繕費用を請求できるわけではありません。ここを理解しておかないと、請求を拒否されたり悪態をつかれたりする危険性もあります。

まずは、どんな修繕や劣化を借主負担とできるのか、退去立会いの基本的な部分からおさらいしていきましょう。

借主に請求できない費用負担もある!負担割合について知っておく

実は、すべての修繕費用を入居者に負担させることはできません国では「原状回復ガイドライン」という借主に請求できる負担範囲をマニュアル化しており、事例をもとに貸主と借主の修繕費用の割合について解説しています。

原状回復ガイドラインに記載している内容を簡潔にまとめて、以下に紹介していきますので、参考にしてください。

原状回復ガイドラインとは

原状回復ガイドラインはとても長いため、重要な部分を抜き出して紹介します。

原状回復の定義

原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること。賃借人の通常の使用により生ずる損耗については賃借人は原状回復義務がないと定め、賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗については賃借人に原状回復義務があると定めている。

参照:原状回復をめぐるトラブルとガイドラインより一部抜粋

この原状回復ガイドラインによると、破損や劣化には「借主責任によるもの」と「自然に劣化していくもの」とに分けられ、「自然に劣化していくもの・生活するうえでどうしてもできてしまう損傷」に関しては貸主負担となり入居者が修繕費用を負担する義務はないと定めています。例えば、クロスの黄ばみや家具を設置したことによる日焼け、画鋲の穴などは、「自然に劣化していくもの・生活するうえでどうしてもできてしまう損傷」にあたり、入居者に修繕費用を負担することは適切ではないとされています。

入居者に費用請求できる劣化とは

では、どんな劣化や破損であれば入居者側負担となるのでしょうか。「借主責任によるもの」とは、以下のようなものです。

  • ドアや壁などを蹴ってわざと壊した
  • 掃除をしなかったためにカビが広がり、壁などが腐食した
  • 無断でペットを飼育しひっかき傷や悪臭を残した

人から部屋を借りる以上、いずれ持ち主に返さなければいけないという意識を持って使用していかなければいけません。室内を適度に清掃したり、規約を守ったりするのも、借りた人の義務です。自分本位で部屋を汚し、傷をつけてしまった部分に関しては、借主側で費用を負担しなければいけません。これを善良なる管理者の注意義務と言います。

原状回復ガイドラインは強制ではない

ただし、原状回復ガイドラインはあくまで「基準を示したマニュアル」であり、破ったからと言って罰則はありません。原状回復ガイドラインに記載されていても、入居者に修繕費用を請求しても、違法にはならないのです。

しかしながら、費用を請求してトラブルを起こし、裁判沙汰になった場合は、原状回復ガイドラインを守っていないことで不利になる恐れがあります。原状回復ガイドラインは「万が一何かあったときのお守り」的な意味合いも持つため、退去立会い前に内容を理解して起きた方が得策とも言えます。

立会い時にすべての確認はできない!追加請求があって当然と考える

貸主側と借主側で現場確認をし、費用負担分を定める、退去立会い。しかし、劣化や破損部分の中には「その場で確認しきれないもの」「入居者側が自分に非はないと主張するもの」も少なくありません。退去立会い時までに、電気・ガス・水道などを停止させていた場合、その場で水を流すことや電気をつけて確認できないこともあります。

このような修繕部分が見つかったときには、後日ハウスクリーニングなどの専門業者を入れて調査してもらう必要があります。ハウスクリーニング業者は、室内を清掃するだけでなく、破損が発生した時期や原因を調べてくれます。

そのため、退去立会い時には、入居者に立会いの場で確認できなかった修繕部分に関しては、追加請求があることを事前に了承してもらいましょう

退去立会いは荷物を全て運び出した日に行う

原則として、退去立会いは荷物がない状態で行います。段ボールや衣類など、多少の運び残しは構いませんが、家具はない方が無難です。家具の下に穴や腐食部分が見つかったり、家具を運び出すときに、室内に傷を付けられたりするかもしれません。

正しい判断をするためにも、家具が運び終わったことを確認してから、退去立会いに臨みましょう

退去立ち合い時は要チェック!見落としがちな場所一覧

下駄箱

それでは、本題に入ります。立会い時にチェックすべきことは「入居者側が故意に壊したかどうか」「自然に劣化したものかどうか」の線引きです。

立会い時に破損や劣化部分の見落としがないよう、以下のようなチェックリストをつくりましたので、実際に退去検査する際は、細かい箇所までしっかり確認してみてください。

玄関ホール回りでチェックすべき箇所

玄関回りは、毎日人が出入りする場所でありながら、見落とされがちな部分でもあります。しかし、玄関ホールは、セキュリティ面や次の入居者の印象を確保するために、しっかり修繕しておきたい場所です。

箇所 確認内容
玄関ドア ドアの開閉具合、部品の欠損、傷や凹みはないか
玄関周辺の設備機器 鍵、インターホン、ドアチェーンなどの欠損
下駄箱 扉の開閉具合、部品の欠損、棚の有無

玄関ドアの破損

まずチェックしておきたい場所は、玄関ドア。照明が暗く、日陰になっていることが多いため、傷や凹みを見つけにくいことがあります。ドア面に凹みはないか、ドアノブは取れかかっていないかをチェックしましょう。

下駄箱の破損

下駄箱は、ドアが開閉するか、中板の有無を確認しましょう。入居者によっては、中板を外し、靴以外の収納スペースとして活用していることもあります。中板を外していた場合、板や留めネジを紛失していないかどうかをチェックしてください。

設備機器の紛失

鍵を故意に壊していないか、スペアキーを紛失していないかチェックしましょう。オートロックキーの場合は、正常に動作するかどうか確認する必要があります。ただし、次の入居者のための鍵交換費用に関しては、一般的にオーナーの負担分となります。

バス・トイレ周辺でチェックすべきこと

バス・トイレなど水回り周辺は、使用頻度が高いため故障しやすい部分です。

また湿気が多いためカビや黒ずみが発生しやすい部分でもありますが、中には入居者の使い方が悪く変色してしまっている箇所もあります。当然ながら、故意に変色させたものは、原状回復費用の請求対象です。自然に変色したものか、故意に変色させたものなのか、しっかり見極めていきましょう

箇所 確認内容
浴室内 浴槽、壁、シャワーヘッド、換気扇などの欠損、傷や凹みはないか
脱衣所内 洗濯機置き場、洗面台などの欠損や破損
トイレ内 便器・便座、トイレ内の床の破損やシミなど

浴室内の汚れや装飾跡

浴槽内のひび割れや傷はないか確認しましょう。また、浴室内を飾るために長期間ジェルシールを貼っていたために、シール跡が残ってしまったケースもありますので、浴室の壁や床が破損していないか、シール跡が残っていないか確認しましょう。

入居中にシャワーヘッドを交換する人もいますが、シャワーヘッドが奇抜なものになっていないか、無理な取り付けで部品が欠損していないかチェックが必要です。

脱衣所部分の部品欠損

洗濯機置き場が設置されている場合、洗濯機の汚水を排水するエルボー周辺が破損していないか確認しましょう。サイズが合わない部品を無理に設置していた場合、エルボー部分が破損していることがあります。

また、洗面台の鏡部分にヒビまたは破損がないか、パッキン部分が取れていないかも確認しましょう。

トイレの便器破損や床のシミ

まずは、便座や便器にヒビ割れはないか、目視でチェックする必要があります。そのほかは、汚水が漏れている場合、便器周辺の床にシミが出来ていることがあります。床から水がにじむような跡はないか、便器の裏の床まで確認しましょう。あわせて確認してみてください。

キッチン回り周辺でチェックすべきこと

キッチン回りは、油や湿気などで汚れが溜まりやすい部分です。どんなに気をつかって使用していても、多少の水垢やカビが発生してしまうことは仕方ありませんが、入居者の清掃頻度が少ないと、通常よりもカビが多く発生したり、腐食が進んでいたりすることもあります。

目視チェックで、汚れがひどいようなときは入居者の負担となりますので、以下の内容を参考にしながら確認を進めていきましょう

箇所 確認内容
蛇口部分 蛇口部分のカビやパッキンの破損
シンク内 細かい傷はないか、排水溝の内部が破損していないか
レンジフード 悪臭はないか、可動時に異音はないか

蛇口部分のカビ

蛇口部分の水垢やカビの発生範囲が大きく、蛇口部分のみならず壁にまで広がっている場合は、清掃頻度や手入れを怠ったと判断できます。また蛇口部分に浄水器を取り付けていたり、入居時と全く異なる蛇口を取り付けていたりしないか確認しましょう。

シンク内の破損

シンク内にヒビ割れや穴はないか水を流し確認してみましょう。シンクの水が正常に流れていないと、シンク下の収納部分のカビや悪臭が発生します。パッキンが千切れていたり、引っ張ったりしていた場合も水漏れが発生することもあります。

レンジフードの油汚れ

レンジフードの汚れは、油カスと埃です。清掃頻度が少ないと、換気が悪くなり、ベタつきや臭いが強くなります。汚れたまま使い続けていた場合には、レンジフード自体が故障してしまうこともありますので、換気扇が動くかどうか確認してみましょう。

リビングや寝室内周辺でチェックすべきこと

滞在時間が長いリビングや寝室は、入居者の生活スタイルの跡が残りやすい部分タバコのヤニ汚れ、釘の穴、家具をぶつけた跡など、チェックすべき部分がたくさんありますので、見落とさないように注視しましょう

箇所 確認内容
室内 壁の傷・クロスの汚れ

(穴・傷・汚れ・日焼け・カビなど)

窓部分 サッシ、窓ガラスや網戸の破損や欠損
室内の設備 換気口や多目的スリープ、照明やシーリングの欠損

室内の壁やクロス汚れ

目につきやすい室内の壁やクロスの汚れを確認します。クロスの日焼けや画鋲穴は、自然に劣化したものと判断されますが、タバコのヤニや釘穴は、入居者に費用を請求できる部分です。また、窓を開けっ放しにしたことで、雨風が入りカビが発生したものも、入居者に請求することができます。

窓や網戸の破損

窓ガラスのヒビ割れや網戸の網が取れていないか、チェックしましょう。サッシ部分が破損していると窓や網戸がスムーズに開閉しないことがありますので、実際に窓をあけて確認してみてください。

また、許可なくペットを飼育したことで壁や床にひっかき傷が残ることもあります。小さな傷でも数が多ければ、入居者に請求できますので、目視チェックしてみましょう。

室内設備の欠損

リビングや寝室内にある設備には、エアコンや火災報知器、照明設置場所のシーリングなどがあります。ヒビや傷などの破損がないか、目視チェックを行いましょう。エアコンがあるときは、ルーバーにヒビが入っていないか、リモコンを紛失していないかを確認します。

このように、部屋を貸した当初にはなかったヒビや傷などがあった場合には、入居者に「いつできた傷か」「なぜこの傷がついたのか」を問いただし、修繕費用を請求しましょう

入居者側が支払いを拒んだときに考えるべきこと

賠償保険

明らかに入居者がつけた損傷であったとしても、入居者側が支払いを拒むケースもあります。なかには「自分がつけた傷じゃない」「入居当初からあった」と責任転嫁する人も少なくありません。

事前に「部屋を貸し出す前の状態」を写真や動画などで残しておいたり、契約書に修繕範囲についてきちんと取り決めておいたりしていた場合には、問題ありませんが、中には証拠となる画像や書面などの取り交わしをしていないオーナーもいると思います。

このような場合には、以下の3つの方法で対処していきましょう。

連帯保証人と連絡をとる

高額な修繕費用となった場合、入居者側が支払いを拒む場合もあります。一度に費用を支払えないような場合には、まずは連帯保証人に修繕費用を請求しましょう。連帯保証人は、契約者同様に支払い義務を背負う立場の人です。契約者が支払いを拒んだときは、連帯保証人に請求しても違法ではありませんので、請求をしてください

ただし、連帯保証人も一度に費用を負担できないこともあります。この場合は、契約者及び連帯保証人の経済状況を考慮しながら、分割払いに応じましょう。

借家人賠償保険を適用させることも考える

借家人賠償保険とは、入居者と賃貸借契約を締結したときに加入した火災保険の特約のひとつです。賃貸契約した部屋に損害を与えた場合には、借家人賠償保険が適用となり、オーナーに保険金が下りることがあります。

借家人賠償保険の他に、修理費用責任や個人賠償責任など、似たような保険がいくつかあります。混同しないよう、補償内容と支払い対象例をあげます

補償内容 支払い対象例
借家人賠償責任 ・火の不始末により発生した焼損

・水漏れによる床の汚損

修理費用責任 ・空き巣被害による設備破損

・飛び石による窓ガラスの損傷

個人賠償責任 ・水漏れによる階下住民への弁償

・入居者同士の衝突による賠償

借家人賠償保険の対象となるのは、不慮の事故により発生した損傷です。ストーブを消し忘れたことによるボヤが原因の焼損、そして洗濯機のホースが外れてしまったために床がシミだらけになってしまった場合に保険金がおります。

このような焼損や汚損は、修繕費用が多額になってしまうこともあります。そのため、これらの損傷が見つかった場合には、保険が適用になるかどうか代理店に確認し、入居者に保険請求を求めましょう。

管理会社に退去立会いを依頼する

退去立会いから費用請求まで、一連の作業を管理会社に依頼することができます。基本的には、管理会社の担当者が退去立会いに参加するため、オーナーが現場にいかずとも問題を解決してくれます。

数々の退去立会いを行ってきた管理会社は、原状回復ガイドラインのような専門的な知識を保有しているだけでなく、トラブル回避の方法や、スムーズに費用を請求する方法を熟知しています

退去立会いに時間をかけていては、いつまで経っても次の入居契約を決めることができません。管理会社が、退去立会いから原状回復工事を済ませるまでに要する期間は、平均して7~10日程度。原状回復工事が早く済めば済むほど、空室期間も短くて済みます。

まとめ

退去立会いは修繕箇所の確認から費用請求まで、数多くの工程をこなさなければいけません。退去立会いをスムーズに終わらせなければ、次の入居が遅れてしまいます

立会いのみを代行してくれる管理会社もいます。これまで委託管理を依頼していなくても、退去立会いから依頼することも可能ですので、退去立会いに不安を感じているときは、管理会社に頼ることを検討してみましょう