
マンション経営やアパート経営などの不動産賃貸経営を行っているオーナーの中には、不動産管理会社が仕事をしないので困っているという人も多いのではないでしょうか?
不動産管理会社が仕事をしない場合、入居者の不満が募る、適切な修繕が行われず賃貸物件の資産価値が低下するといったデメリットを伴うので注意が必要です。
この記事では、賃貸物件の管理を委託している不動産管理会社が仕事をせずに困っている賃貸物件のオーナーに向けて、対応方法や放置するリスク、不動産管理会社を変更する際の手順を解説します。
仕事をしない不動産管理会社にはまず話し合いから始める
賃貸物件のオーナーの中には、管理を不動産管理会社に委託しているにもかかわらず、不動産管理会社が仕事をしないので困っている人も多いと思います。そのような不動産管理会社にはまず話し合いから始めることをおすすめします。
「話し合うよりも不動産管理会社を変更したい」と考えている賃貸物件のオーナーも多いかもしれませんが、いきなり不動産管理会社を変更することはあまりおすすめしません。
その理由は、不動産管理会社を探すのに手間と時間がかかる、引き継ぎでトラブルが生じる、不動産管理会社の変更に対して入居者の不満が募る可能性があるためです。そのため、不動産管理会社の変更は最終手段として残しておいた方が良いと言えるでしょう。
不動産管理会社と改善点を話し合う
不動産管理会社と改善点を話し合うと言っても、具体的にどのような内容の話をすればいいか分からない人も多いと思います。賃貸物件のオーナーが不動産管理会社に抱えている代表的な不満として、以下の6つが挙げられます。
- 空室が埋まらない
- 共用部分の清掃が行き届いていない
- 入居者対応が疎かになっている
- 定期的な報告が行われていない
- 原状回復工事や修繕がいい加減になっている
- 家賃の値下げ交渉の回数が多い
それぞれの改善点を詳しく見ていきましょう。
空室が埋まらない
不動産管理会社に管理を委託しているにもかかわらず、空室が埋まらず困っているという人も多いと思います。
周辺の類似物件の入居率が高い場合、立地の影響を受けているとは言えず、不動産管理会社が仕事をしていない可能性が高いと言えます。
例えば、時代の流れに合った募集方法を取り入れていない、待ちの姿勢で積極的に募集広告を行っていないなどです。
ネットが普及するまでは直接不動産会社を訪れて物件情報を収集する人もいましたが、最近はネットの普及によって不動産ポータルサイトで物件情報を収集してから不動産会社に問い合わせる人が増えています。
不動産ポータルサイトを活用していない場合、まずは不動産ポータルサイトを活用しているかどうかを確認します。
既に不動産ポータルサイトを活用している場合は、物件情報を登録しているだけで物件情報が乏しい可能性も。「駅から徒歩○分」「○年にリフォーム済」などの魅力が説明されている、分かりやすい写真が複数枚掲載されているかどうか確認しておきましょう。
共用部分の清掃が行き届いていない
管理委託契約書に廊下や階段、エントランスホールといった共用部分の清掃が含まれていても落ち葉や汚れが目立つケースも見られます。
このように共用部分の清掃が行き届いていない不動産管理会社の場合、管理委託契約書の中に共用部分の清掃が含まれている旨を指摘します。
指摘するだけでは同じことの繰り返しになる可能性があるので注意が必要です。「清掃は月に何回なのか」「実施日(曜日)は決まっているのか」「どのような清掃内容なのか」「清掃の記録を付けているか」など、清掃のルールを確認しておくことが重要です。
入居者対応が疎かになっている
騒音や異臭などの近隣住民とのトラブル、給湯器の故障といったトラブルなどのクレームへの対応を疎かにしている不動産管理会社もあります。
重度のクレーマーで、対応していると他の業務に支障が生じるといった特殊な事例を除いて、入居者対応は入居者満足度に直結するので誠実な対応が求められます。
入居者対応が疎かになっていて頻繁に退去が発生しているようなケースでは、「入居者対応がどのような体制(対応時間や専属部署の導入の有無)になっているのか」「連絡があってからどのくらいの期間で返答しているのか」などを確認します。
オーナーとの連携がスムーズにいかないことが原因で対応が遅れている場合は、いくらまでの工事またはどのような工事であれば、オーナーの許可を得ずに進めても良いといったルールを決めておくのも良いでしょう。
定期的な報告が行われていない
入退去や入居者同士または設備のトラブルが発生しても連絡がない、勝手に修繕工事を行って請求書だけが届くなど、ホウレンソウを行わない不動産管理会社に悩む賃貸物件のオーナーも多いと思います。
不動産管理会社は、賃貸物件のオーナーと管理委託契約を締結しているのであれば、基本的に定期的または何かが生じた場合は物件の状況を報告しなくてはなりません。
オーナーに報告せずに不動産管理会社の独断で物事を判断するのは、従来の不動産管理会社の行うべき管理業務とはかけ離れていると言えます。
このような不動産管理会社には、「どのくらいの頻度で報告するのか」「どのようなケースでオーナーに判断を仰げばいいのか」など、ルールを明確にしておくことが大切です。ただし、日常業務に支障が出るくらいの常識を逸脱した厳しいルールを設けてはいけません。
物言わぬ賃貸物件のオーナーの場合、優先順位を下げられる可能性があるため、管理に厳しいオーナーという印象を与えることが重要です。しかし、横柄な態度で接する、厳しいルールを突きつけると、不動産管理会社との関係が悪化するので注意しましょう。
原状回復工事や修繕がいい加減になっている
入居者が退去した後は、次の入居者が見つかるまでに原状回復工事を行う、経年劣化に応じて定期的に修繕を行いますが、仕事をしない不動産管理会社はこれらをいい加減に行うケースも多く見られます。
提携する工事担当のリフォーム会社や工務店などもいい加減であることが多く、費用を余計に徴収されるケースもあるので注意が必要です。
このような不動産管理会社には、「どのような原状回復工事を行うのか」「経年劣化に対してどのような頻度で修繕を行うのか」「費用がいくらなのか」を確認します。
また、工事前と工事後を確認する、他のリフォーム会社や工務店などに相見積もりをとるのも改善に導く上で重要なポイントと言えるでしょう。
家賃の値下げ交渉の回数が多い
不動産管理会社の中には、空室が生じた場合に家賃の値下げ交渉を頻繁に行ってくるところもあります。
空室が生じている場合は、家賃を下げることによって入居希望者が増える可能性が高いため、家賃の値下げ交渉が間違っているというわけではありません。しかし、安易に家賃を下げると家賃収入が少なくなるので注意が必要です。
空室対策の方法は家賃の値下げだけではありません。「敷金や礼金の値下げや無料にする」「フリーレント(無料で入居できる期間)を設ける」など空室対策は数多くあります。
家賃の値下げは最終手段なので、他の方法で空室対策にならないのかどうかを検討することが重要と言えるでしょう。
担当者に問題がある場合は担当者を変更する
不動産管理会社の担当者と改善点を話し合っても状況が改善しない場合は、不動産管理会社に問題がある可能性もありますが、担当者に問題があるケースも少なくありません。そのため、改善が見られない場合は担当者の変更を検討します。
不動産管理会社は、複数人の従業員を抱えているのが一般的です。従業員の中には、積極的に管理に取り組む人もいれば、必要以上に取り組もうとしない人もいます。
また、1人あたりの管理物件数が多く、1つ1つの物件に手が回っていない従業員も。このような不誠実またはキャパオーバーの担当者が原因の場合は、担当者を変えることで状況が改善する可能性があります。
仕事をしない不動産管理会社に困っている場合は、まず不動産管理会社と改善点を話し合う、それでも改善しない場合は担当者を変更し、不動産管理会社の変更は最終手段として残しておきましょう。
仕事をしない不動産管理会社を放置すると経営が悪化する
「不動産管理会社と話し合うもしくは担当者の変更を申し出ることが面倒」といった理由で、仕事をしない不動産管理会社を放置しようとしている賃貸経営のオーナーもいると思います。
しかし、仕事をしない不動産管理会社を放置することは、以下の3つのデメリットを伴うので注意が必要です。
- 賃貸経営を続けることが難しくなる
- 災害リスクが高くなり無駄な支出が増える
- 空室が増えることで買い手が見つかりにくくなる
それぞれのデメリットを詳しく見ていきましょう。
賃貸経営を続けることが難しくなる
仕事をしない不動産管理会社を放置していると、経営の悪化によって賃貸経営を続けることが難しくなります。
空室が埋まらなければ安定した家賃収入が得られません。また、清掃や入居者対応が疎かだと入居者満足度の低下によって空室が目立ってきます。
空室が増加して安定した家賃収入が得られなくなった場合、キャッシュフローの悪化によって賃貸物件を購入時に契約した不動産ローンの返済を続けられなくなります。その結果、不動産ローンの返済を行うために賃貸物件を手放さなくてはならないので注意しましょう。
災害リスクが高くなり無駄な修繕が増える
不動産管理会社が原状回復工事や修繕をいい加減に行っている場合は、災害リスクが高くなり無駄な支出が増えます。
リフォーム会社や工務店と連携して不必要な工事を行っている場合、放置すれば無駄な支出が増えることでキャッシュフローが悪化します。
また、経年劣化に伴う計画的な修繕が実施されていなければ、火災や地震などの災害リスクが高まるだけでなく、修繕が必要になった時の工事規模が大きくなって無駄な支出が増えるので注意が必要です。
適切な原状回復工事や修繕が行われていないと、空室が生じても埋まらない原因になることも覚えておきましょう。
空室が増えることで買い手が見つかりにくくなる
不動産管理会社の怠慢で空室が増えれば、賃貸物件を手放したい場合でも買い手が見つかりにくくなるので注意が必要です。
居住用物件は築年数や立地条件などが同じであれば、ほとんど同じような売却価格になるのが一般的です。しかし、賃貸用物件はそこに利回りがどのくらいなのかが加味されます。
そのため、空室の増加によって利回りが低くなった場合、築年数や立地条件などが同じような物件に売却価格を合わせても、利回りの低さを理由に割高と扱われてしまいます。
空室の多い賃貸物件は手放したいと思っても買い手が見つからない、買いたたかれる可能性が高いという点に注意しましょう。
不動産管理会社を変更する4つの手順
不動産管理会社と話し合う、担当者を変更しても状況の改善が見られなかった場合、いよいよ不動産管理会社を変更することになります。
不動産管理会社を変更する際は、いくつか手続きを行わなくてはなりません。手続きの不備が原因で不動産管理会社を変更できないといったトラブルを生じさせないために、変更する際の手順を事前に確認しておくことが重要です。
不動産管理会社を変更する際の手順は以下の4つです。
- 管理委託契約書の内容を確認する
- 不動産管理会社に解約の連絡を行う
- 新しい不動産管理会社を探す
- 不動産管理会社間で引き継ぎを行う
それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。
①管理委託契約書の内容を確認する
不動産管理会社を変更する際は最初に管理委託契約書の内容を確認します。不動産管理会社に管理を委託する際は、賃貸物件のオーナーと不動産管理会社は管理委託契約を締結しますが、その際に交わす管理委託契約書には解約時のルールが記載されているのが一般的です。
管理委託契約書に「解約時は○カ月前に告知が必要」と記載されている場合は契約書の内容に従って告知を行います。
記載されていない場合は国土交通省の定めている賃貸住宅標準管理委託契約書のルールである申し出てから3カ月後に契約が解約されると考えられます。告知してからすぐに管理委託契約を解約できるわけではないので注意しましょう。
②不動産管理会社に解約の連絡を行う
管理委託契約書の解約に関する事項を確認した後は不動産管理会社に解約の連絡を行います。「不動産管理会社に直接解約を伝えるのに抵抗がある」と考えている人も多いと思いますが、直接解約を伝える必要はありません。
解約の告知は、不動産管理会社に解約通知書の送付で行うことも可能です。解約通知書には、以下の3つの内容を記載しておく必要があります。
- いつ締結した契約でどの契約を解約するのか
- 管理委託契約書の第何条に基づく解約なのか
- いつをもって契約解除となるのか
上記3つの内容が記載されていないと、不動産管理会社に解約を告知したとは認められません。解約の告知ができていないと手続きが先に進まないため、解約通知書を作成する場合は内容に漏れがないか確認することが重要です。
また、解約までの期間が短く設定されている場合は時間に余裕がないため、不動産管理会社に解約を告知する前に新しい不動産管理会社を探しましょう。
③新しい不動産管理会社を探す
不動産管理会社に解約を告知してから解約までは3カ月程度の期間が空くため、その間に新しい不動産管理会社を探します。
不動産管理会社の変更に至った背景には、現在の不動産管理会社への不満が挙げられるため、「どのような不満を抱いているのか」「その不満を解決するにはどのような不動産管理会社に管理を委託すればいいのか」を考えておく必要があります。
例えば、空室対策に不満があった場合、不動産ポータルサイトを活用しているかどうか、物件説明が丁寧で分かりやすい写真が複数準備されているかなどです。
また、変更後の不動産管理会社の管理業務が変更前よりも狭かった場合、変更によって不満を解消できても他の不満が生じることになります。そのような事態に陥らないためにも、従前の管理業務が新しい不動産管理会社にも盛り込まれているか確認しておきましょう。
④不動産管理会社間で引き継ぎを行う
新しい不動産管理会社が決まってからは、新旧の不動産管理会社間で引き継ぎが行われます。基本的に不動産管理会社間で行われることなので、オーナーが行うことは特にありません。
しかし、不動産管理会社間の引き継ぎが疎かになっている場合には、管理に必要な書類や鍵が引き継がれていないなど、トラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。そのため、オーナーは不動産管理会社間で引き継ぎが行われているのかを確認した方が良いと言えます。
また、不動産管理会社が変更になった場合、入居者は新しい不動産管理会社が指定する口座に家賃を振り込むことになるため、入居者によっては振込手数料が生じて不満が募る可能性も。
不動産管理会社の変更は賃貸物件のオーナーの都合によるものなので、入居者が振込手数料の発生しない口座の開設を予定している場合は、不満を募らせないように開設が完了するまでの振込手数料をオーナーが負担するといったケアを行いましょう。
まとめ
不動産管理会社に管理を委託しながら賃貸経営を行っているオーナーの中には、仕事をしない不動産管理会社に困っている人も多いと思います。
仕事をしない不動産管理会社を放置すると経営が悪化して賃貸経営の継続が困難になるため、速やかに対策を練ることが重要です。
「不動産管理会社を変更すればいい」と考える人も多いかもしれませんが、不動産管理会社の変更には手間と時間がかかるため、まず不動産管理会社と改善点について話し合う、担当者を変更するなど他の方法を選択することをおすすめします。
それでも改善が見られない場合は不動産管理会社の変更です。不動産管理会社を変更する際はいくつか手続きを伴います。不動産管理会社の変更を速やかに進めるためにも、事前に手順を確認してから解約に臨みましょう。