
空室や家賃滞納が生じていても満室状態の家賃収入が得られるサブリース契約。リスクを抑えつつ安定した賃貸経営を行いたいと考えているオーナーの中には、サブリース契約を締結しているオーナーも多くいます。
しかし、家賃保証金額の引き下げやサブリース会社の経営不振などを理由に契約解除を検討しているオーナーもいると思いますが、契約は簡単に解除できるのでしょうか?
この記事では、サブリース契約は簡単に解除できるのか、解除方法と注意点を解説します。
サブリース契約の解除を検討する5つのタイミング
サブリース契約とは、サブリース会社がオーナーの賃貸物件を一括で借り上げて転貸する契約です。
物件のオーナーは空室や家賃滞納が生じている場合でも、サブリース会社から満室状態の家賃収入を得られるため、空室リスクや滞納リスクを抑えられます。
また、サブリース契約では、入居者が行う入退去の手続きは転貸人であるサブリース会社が全て行うため、オーナーの負担軽減が可能です。そのため、賃貸物件のオーナーの中には、サブリース契約を締結している人も多いと思います。
しかし、サブリース契約の家賃保証の金額は通常の賃料よりも低いので収益性が低くなる、オーナーが自由に入居者を選べないといったデメリットも伴います。デメリットが原因でキャッシュフローが悪化して経営の継続が困難になる可能性もあるので注意が必要です。
そのような場合はサブリース契約を解除する必要がありますが、どのような状態であれば契約の解除を検討した方が良いのでしょうか?契約解除の判断材料の1つとなるよくあるタイミングは以下の5つです。
- 家賃保証の金額が下がった
- 高額の修繕費用を請求された
- オーナーに不利な免責規定が設けられていた
- サブリース会社からの入金が遅れている
- 入居者トラブルが増加している
どのようなタイミングなのか詳しく見ていきましょう。
家賃保証の金額が下がった
サブリース契約の解除を検討するタイミングとしてよく挙げられるのが家賃保証の金額の引き下げです。
サブリース契約は契約内容による違いはあるものの、2年に1回のペースで家賃の見直しが行われており、家賃保証の金額が引き下げられる可能性があります。
築年数の経過や周辺の家賃相場の下落、空室が増加しているなどの明確な根拠に基づいて家賃保証の金額が引き下げられているのであれば仕方ないと言えます。
しかし、明確な根拠に基づかずに家賃保証の金額を引き下げている場合、サブリース会社の収益アップを目的とした引き下げと判断できるため、容認できる引き下げとは言えません。
また、明確な根拠に基づく値下げてあっても、従来得られる家賃収入よりも30~40%程度低い家賃保証の金額の場合はキャッシュフローが悪化して経営継続が困難になります。
そのため、明確な根拠に基づかない、または経営継続が困難になるような家賃保証の金額の引き下げがあった場合は、契約を解除した方が良いと言えるでしょう。
高額の修繕費用を請求された
高額の修繕費用をサブリース会社に請求された場合もサブリース契約解除のタイミングの1つと言えます。
サブリース会社は従来の賃料より安く部屋を借りて、高く貸し出すことによって得られる差益を収入源としています。
サブリース契約では、家賃収入の10%程度を徴収する代わりに、サブリース会社が家賃を保証する、または簡易的な修繕をサブリース会社負担で行うのが一般的です。
しかし、サブリース会社は空室リスクや家賃滞納リスクと隣り合わせにあるため、リスクを少しでも軽減するために修繕内容や金額を勝手に決めて高額の修繕費用を徴収して利益を得ようとするサブリース会社もいます。
高額の修繕費用を請求されることが増えており、請求書の内容が曖昧な場合には不適切な請求と考えられるので注意しましょう。
オーナーに不利な免責規定が設けられていた
オーナーに不利な免責規定が設けられていることに気づいた時も、サブリース契約解除のタイミングの1つです。
サブリース契約では、サブリース契約を締結した最初の数カ月間、退去時に1カ月といった免責規定を設けているサブリース会社もいます。
免責規定とは、従来サブリース会社は全室分の家賃を支払わなくてはなりませんが、例外を設けることでサブリース会社の負担を軽減するものです。
サブリース会社がリスクを負いすぎて経営破綻に陥ってしまうと、オーナーは家賃保証が受けられなくなります。そのため、多少の免責規定は双方が安定した経営を続けるためにも不可欠と言えます。
しかし、サブリース会社の中には、初回の免責期間を半年、退去時に2カ月、契約更新時に数カ月など、オーナーにとって不利な免責規定が設けられているところもあるので注意が必要です。
オーナーに不利な免責規定が設けられているサブリース会社も、契約を継続したところでキャッシュフローが悪化する可能性が高いため、早めに解除を申し出た方が良いでしょう。
サブリース会社からの入金が遅れている
サブリース会社からの入金が遅れている場合、速やかに解除の手続きを行った方が良いと言えます。その理由は、サブリース会社が経営破綻する可能性があるためです。
サブリース契約を締結していれば安定した家賃収入が保証されると思っているオーナーも多いかもしれませんが、必ず保証されるというわけではありません。
サブリース会社が経営破綻すれば、家賃保証が受けられなくなる、本来サブリース会社から支払われるべき家賃を回収できなくなる可能性があるので注意が必要です。
従来であれば、サブリース会社は入居者から受け取った家賃から利益を差し引いた残りをオーナーに振り込むため、入金が遅れることは基本的にありません。
入金が遅れているということはサブリース会社の資金繰りが悪化して経営破綻のリスクが高まっていると言えるため、リスク回避のためにも早めに解除を申し出ましょう。
入居者トラブルが増加している
入居者トラブルが増加している状態も契約を解除するタイミングの1つです。その理由は、入居者トラブルが増加しているということは、適切な管理が行われていないためです。
委託管理の場合は入居審査を不動産会社が行いますが、入居させるかどうかの最終決断はオーナーが行います。そのため、悪質な入居者を排除できる体制が整っていると言えます。
しかし、サブリース契約では、転貸人であるサブリース会社しか入居審査を行わないため、悪質な入居者が入居していてもオーナーは分かりません。サブリース会社の中には、空室を埋めることを優先して適切な入居審査を行っていないところもあるので注意が必要です。
悪質な入居者が増加した場合、異臭や騒音などで入居者間または近隣住民とのトラブルが生じる、部屋や建物の劣化が進行するリスクが高まります。
トラブルが増加していてもサブリース会社が隠蔽した場合、オーナーはトラブルの事実を把握できません。
オーナーが近くに住んでいる場合、物件を訪れて共用部分や掲示板などをチェックすればトラブルの有無や入居者の質をある程度は判断できるため、定期的に物件を訪れて適切な管理が行われているかどうかチェックしておきましょう。
サブリース契約の解除方法
上記のタイミングに該当していてサブリース契約を解除したいと考えている人の中には、解除方法が分からず困っている人も多いと思います。サブリース契約の解除方法は以下の通りです。
- サブリース会社と話し合う
- 賃貸物件の現状を確認する
- 解除後の出口戦略を考える
- 契約書の内容を確認する
- 解除通知書を作成して提出する
- 解除通知書が届いたか確認する
それぞれの解除方法について詳しく見ていきましょう。
①サブリース会社と話し合う
サブリース契約を解除する前に、まずはサブリース会社に契約の解除を検討している旨を正直に伝えます。
サブリース契約の解除に至った場合は、サブリース会社は貴重な収入源を失う、オーナーは契約の解除には手間と時間、無駄な支出が生じることになるため、双方にとって契約解除はマイナスと言えます。
そのため、現状に不満を抱いているのであればまずはその内容をサブリース会社に伝えて、双方が歩み寄れるかどうか探ってみましょう。
②賃貸物件の現状を確認する
話し合いがうまくまとまらなかった場合、続いて賃貸物件の現状を確認するという手順に移行します。
委託管理では定期的に入居状況や修繕状況が報告されますが、サブリース契約では現状が報告されないケースもあります。
現状を確認しないまま契約を解除すると、空室が多く収入が大幅に減少する、適切な修繕が行われておらず無駄な支出が生じる可能性があるので注意が必要です。
そのため、契約を解除してもしばらく安定した家賃収入が得られる状態を維持できるのか、サブリース会社負担の修繕が行われているのかを確認しておきましょう。
③解除後の出口戦略を考える
サブリース契約を解除した場合、賃貸経営を継続するのであれば物件管理をどうするのか、賃貸経営を継続しないのであれば賃貸物件をどうするのかという出口戦略を考えなくてはなりません。
解除後の出口戦略として、以下の3つが挙げられます。
- 委託管理に切り替える
- 自主管理に切り替える
- 他の活用方法に切り替える
それぞれの出口戦略について詳しく見ていきましょう。
委託管理に切り替える
専業ではなくサラリーマンとして働きながら兼業オーナーになる場合は、物件管理を自ら行うことは困難です。そのため、管理を管理会社に委託しなくてはなりません。
委託管理では、管理の専門家である管理会社が入居者募集や入退去手続などの入居者管理、日常点検や修繕などの建物管理といった賃貸物件の管理を全て行ってくれるため、管理の手間と時間を省くことが可能です。
しかし、管理会社に報酬として家賃収入の約5%の管理委託費を支払わなくてはなりません。各管理会社によって管理委託費の金額と業務内容は異なるため、違いをよく確認してから管理を依頼しましょう。
自主管理に切り替える
オーナーが既に退職しているケースでは、管理の時間を十分に確保できるため、自主管理を行うことも可能です。
自主管理では、管理委託費を支払わずに済むため、賃貸経営で得られる利益を高められます。しかし、自主管理は専門的な知識が必要になる、速やかな対応が求められるなど、精神的・体力的な負担が大きくなります。
うまく対応できずに入居者の不満が募ると、退去者が増えて賃貸経営の継続が困難になる可能性もあるため、できる限り委託管理を選んだ方が良いと言えるでしょう。
他の活用方法に切り替える
空室率が高く賃貸経営に限界を感じているのであれば、他の活用方法に切り替えるという選択肢が挙げられます。
例えば、賃貸物件を売却して現金化する、建物を解体して駐車場経営、トランクルーム経営、太陽光発電を始めるなどです。
他の活用方法に切り替えても、必ず成功するとは限りません。賃貸物件の売却では、複数の不動産会社に査定を依頼して査定額の高い不動産会社に仲介を依頼することが重要です。
また、他の活用方法に切り替える場合にはそれぞれの活用方法のメリットとデメリットをよく理解してから立地条件に合った活用方法を選びましょう。
④契約書の内容を確認する
解除後の出口戦略を考えた後は、契約書の内容を確認します。サブリース契約は、原則途中解除が禁止されており、途中で契約の解除を申し出ることはできません。しかし、それでは双方の負担が大きくなるため、契約書に解除条件が設けられているのが一般的です。
契約書を確認する際は、以下の事項についての記載があるか確認します。
- 契約期間に関する事項
- 中途解除に関する事項
- 契約違反に関する事項
- 違約金に関する事項
特に確認しておかなくてはならないのは、中途解除と違約金に関する事項です。契約書に「解除通知から〇カ月が経過すれば本契約は終了する」という記載がある場合、解除通知をサブリース会社に行えば契約を解除することが可能です。
中途解除に関する事項が記載されていない場合、契約解除には正当事由が必要となるため、簡単に契約を解除できません。
また、違約金に関する事項が記載されている場合、途中解除を行うことでサブリース会社に違約金を支払わなくてはならないケースもあるので注意しましょう。
合意解除の場合はすぐ契約を解除できる
双方の話し合いによって合意解除に至った場合、契約書の内容に基づく必要はありません。そのため、「解除通知から〇カ月が経過すれば本契約は終了する」という記載があっても、期間を待たずに契約を解除することが可能です。
ただし、話し合いで合意解除に至った場合も、すぐ契約を解除することはおすすめしません。その理由は、委託管理や自主管理に切り替えるのに必要な時間を十分に確保できないためです。
合意解除の場合は、委託管理や自主管理に切り替えるのにどのくらいの期間が必要なのか事前に考えておきましょう。
⑤解除通知書を作成して提出する
契約書を確認した後、解除通知書を作成して提出します。解除通知書に記載する必要がある内容は以下の通りです。
- 日付
- サブリース会社の名称
- オーナーの名前
- 物件の名称
- 物件の住所
- 解除理由
- 契約日
- 解除希望日
どのような解除通知書を作成すればいいか分からず困っている方は、管理を委託する不動産会社に相談しましょう。
⑥解除通知書が届いたか確認する
解除通知書を作成して退出した後は、解除通知書が届いたかどうか確認します。その理由は、手違いで解除通知書がサブリース会社に届いていなければ、解除が成立しないためです。
サブリース会社に解除通知書が届いたかどうかを確認するのはメールでも問題ありません。そのため、サブリース会社の担当者に電話をかけることに抵抗があるオーナーは、メールで確認すると良いでしょう。
サブリース契約を解除する際の4つの注意点
現在のサブリース契約に不満を抱いている場合、サブリース契約を解除することによって状況の改善が期待できます。
しかし、サブリース契約を解除することでトラブルに発展する可能性があります。そのため、契約を解除する際は、以下の4つの注意点を踏まえた上で契約を解除することが重要です。
- 違約金が発生する可能性がある
- 家賃収入が保証されなくなる
- 正当事由を求められるのが一般的
- 無駄な修繕費用が発生する可能性がある
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
違約金が発生する可能性がある
サブリース契約は原則途中解約不可なので、サブリース会社から解除に応じる費用として違約金を請求される可能性があります。
違約金の金額は、サブリース会社ごとに異なります。「契約解除を申し出たところ、多額の違約金を請求されてトラブルに発展した」という事態に陥らないためにも、違約金の有無を事前に確認しておきましょう。
家賃収入が保証されなくなる
サブリース契約を解除した場合、契約解除後は家賃収入が保証されなくなります。そのため、空室が多い状況で契約を解除した場合、大幅な収入の減少でキャッシュフローが悪化する可能性があるので注意が必要です。
家賃収入が保証されなくなって賃貸経営の継続が困難になるといった事態を防ぐためにも、解除前に入居状況を確認しておくことも重要と言えるでしょう。
正当事由が求められるのが一般的
契約書に解除に関する事項が記載されていない場合、契約解除を行うには原則正当事由が必要になります。正当事由が認められるのは、以下のようなケースです。
- 経年劣化が進行していて建物を取り壊さなくてはならない
- 現金化のために賃貸物件を売却しなくてはならない
- サブリース会社が契約書の内容を遵守していない
上記に該当していても、必ず契約を解除できるとは限りません。裁判所に訴えて正当事由を認めてもらえなければ契約を解除できない、立退料を要求される可能性もあるという点に注意しましょう。
無駄な修繕費用が発生する可能性がある
小さな修繕はサブリース会社負担で行われるのが一般的ですが、サブリース会社の中には的確な修繕を行っていないケースもあるので注意しなくてはなりません。
的確な修繕が行われていないことに気づかないまま契約を解除した場合、オーナー負担で修繕を行うことになります。
無駄な支出を少しでも減らすためにも、サブリース会社と契約を解除する際は、賃貸物件の修繕履歴を確認するといったように、適切な修繕が行われているかを確認しておくことも重要と言えるでしょう。
まとめ
サブリース契約は家賃保証が受けられるのが大きな魅力と言えますが、オーナーの中には、家賃保証の金額を引き下げられた、高額の修繕費用を請求されたなどの不満が原因で契約解除を検討している人も多いのではないでしょうか?
サブリース契約は原則正当事由がなければ解除できませんが、サブリース会社と締結した契約書に解除に関する事項が記載されていれば、その内容に基づきながら解除することが可能です。
サブリース契約を解除する際は手間と時間がかかります。また、解除に応じてもらうために違約金を支払わなくてはならないケースも。
トラブルを未然に防ぐ、スムーズに解除を進めるためにも、サブリース契約を解除する際の手順と注意点をよく確認してから契約の解除に臨みましょう。