
不動産賃貸経営の管理業務を手掛ける管理会社の中には、オーナーからの質問や入居者からのクレームに対する返答が遅いなど、対応に問題がある管理会社もいます。
このような対応の遅い管理会社をそのまま放置していると、入居者満足度や資産価値の低下が原因で、賃貸経営に支障が生じる可能性があるので注意が必要です。
この記事では、対応の遅い不動産会社の解決方法、管理会社を変更する場合の手順や注意点を解説します。
対応の遅い管理会社の解決方法
賃貸物件のオーナーの中には、管理に手間と時間がかかる、管理の専門家に任せて賃貸経営のリスクを抑えたいなどの理由で管理会社に管理を委託している人も多いと思います。しかし、管理会社に管理を委託していれば万全というわけではありません。
オーナーの中には、担当者となかなか連絡が取れない、返答や対応に時間がかかるなど対応の遅さに不満を抱いている人も多いのではないでしょうか?
そのような管理会社に管理を委託していても、不十分なサポートが原因による入居者満足度の低下で空室増加、適切な修繕が行われないことによる資産価値の減少、修繕費用の増大などが生じます。
そのため、安定した賃貸経営を継続するには現在の管理状況の改善を求めることが重要です。対応の遅い管理会社の解決方法として、以下の3つが挙げられます。
- 担当者に改善を要求する
- 管理会社に改善を要求する
- 管理会社を変更する
それぞれの解決方法について詳しく見ていきましょう。
担当者に改善を要求する
管理会社の対応が遅い場合、まずは担当者に現状の改善を要求します。「修繕工事の承認から〇日経っても修繕工事に取り掛かっていない」「空室対策の提示を求めたものの〇日経っても返答がない」といった現状を具体的に指摘します。
現状の指摘だけではただのクレームになるため、改善はそこまで期待できません。そのため、指摘する際は「〇日までに工事に取り掛かる・返答する」といったように期日を設けることが重要です。
期日までに改善が見られなかった場合には担当者に問題があると言えるため、次のステップに移行します。
管理会社に改善を要求する
担当者に指摘しても改善が見られない場合は管理会社に改善を要求します。管理会社に改善を要求する際は、管理の現状や担当者に改善を要求しても変化が見られなかったことを具体的に伝えます。
再度期日を定めて改善を要求しますが、「期日までに改善が見られなかった場合は管理会社を変更する」といったように最終通告であることを伝えることが重要です。
管理会社は重要な収入源を失うことは避けたいため、担当者の変更や契約内容の見直しなどの提案を通して状況の改善へと導いてくれる可能性が高いと言えます。
それでも期日までに改善が見られなければ、委託を続けていても意味がないため、管理会社の変更に踏み切った方が良いでしょう。
管理会社を変更する
管理会社に指摘しても改善が見られない場合は管理会社を変更します。管理会社を変更すれば根本的な改善が期待できるので「最初から管理会社を変更すればいいのでは?」と考えているオーナーも多いと思います。
しかし、管理会社を変更する場合は、オーナーは委託先を探す手間と時間がかかる、入居者は振込先の変更に手間がかかる、変更に不安を抱く可能性もあることから、管理会社をいきなり変更することはおすすめしません。
オーナーと入居者の負担を考えた場合、管理会社を変更せずに済むのであれば、なるべく他の解決方法を選んだ方が良いと言えるでしょう。
管理会社を変更する際の手順
管理会社の変更に時間がかかった場合、対応の遅れによる支障が大きくなる可能性があるのでどのような手順で変更するのか確認しておくことが重要です。管理会社を変更する際の手順は以下の通りです。
- 現在の管理会社との契約を確認する
- 変更先の管理会社を選ぶ
- 現在の管理会社に解約を通知する
- 管理会社同士で引き継ぎを行う
- 入居者に管理会社変更を通知する
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
現在の管理会社との契約を確認する
管理会社を変更する際は、まず現在の管理会社との契約を確認します。契約を確認する理由は以下の2つです。
- 業務内容の漏れを防ぐため
- 解約をスムーズに行うため
各管理会社によって業務内容が異なるため、現在の管理会社と変更先の管理会社の業務内容が同じだとは限らず、以前の業務内容が今回は含まれていないということも珍しくありません。トラブルを未然に防ぐためにも業務内容を事前に確認しておくことが重要です。
また、解約条件も各管理会社で異なるので注意が必要です。管理会社が国土交通省の作成した賃貸住宅標準管理委託契約書に基づいて契約書を作成している場合は、オーナーが解約通知を行った日から3カ月後に契約が解除されます。
しかし、管理会社が別の解約条件を定めている場合はそれに従うことになります。解約条件を確認せずに解約を進めると、トラブルに発展する可能性が高いため、必ず現在の管理会社との契約を確認しましょう。
変更先の管理会社を選ぶ
現在の管理会社との契約を確認した後は、新しい管理会社の選定に移ります。「管理会社への解約通知が先では?」と思ったオーナーもいるかもしれませんが、解除までの期間が短ければ急いで変更先の管理会社を選定しなくてはなりません。
管理会社がスムーズに見つからない場合には自主管理の期間が生じる、焦って管理会社選びに失敗して再度管理会社を変更しなくてはならない可能性があります。
そのため、解約までの期間が長く設定されているといった特別な理由を除いて、余裕を持って管理会社を選ぶためにも変更先の管理会社を選ぶのを先にした方が良いと言えます。
変更先の管理会社を選ぶ際は同じような失敗を繰り返さないようにするために、以下のようなポイントを押さえながら管理会社を選ぶことが重要です。
- 管理物件の入居率が高い
- 管理委託費の設定が高くない
- 物件情報を会社全体が把握している
- 状況に応じて地域密着型と大手を使い分ける
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
管理物件の入居率が高い
賃貸経営で重要なのは高い入居率を維持することです。そのため、管理会社の管理物件が高い入居率を維持できているかが重要な判断材料の1つと言えます。
所有物件と築年数、エリア、規模などの条件が近い類似物件の入居率、不動産ポータルサイトに登録されている、説明文が分かりやすく写真が多く掲載されているか確認します。
類似物件の入居率が高く、不動産ポータルサイトに登録していて他の不動産会社との差別化を図っている場合は営業力の高い管理会社と言えるため、安心して管理を委託できるでしょう。
管理委託費の設定が高くない
管理委託費の設定は管理会社ごとに異なります。管理委託費の高い管理会社に委託した場合、管理委託費の負担が重くのしかかるため、管理委託費の設定が高くない管理会社を選ぶこともポイントの1つです。
管理委託費は入居者から振り込まれた家賃の約5%に設定されているのが一般的です。しかし、管理会社の中には、業務内容に差がないにもかかわらず8%や10%に設定しているところも。
業務内容が他の管理会社よりも充実していて管理委託費が高く設定されているのであれば特に問題はありません。しかし、同じ業務内容でただ単に管理委託費が高く設定されている場合は管理委託費の設定が低い管理会社を選んだ方が良いと言えるでしょう。
物件情報を会社全体が把握している
担当者しか物件情報を把握していない管理会社は、担当者が不在だと物件情報が分からない、担当者が変わると引き継ぎに時間がかかるなどのデメリットを伴うので注意が必要です。
しかし、物件情報がデータベースで管理されているような管理会社の場合、担当者が不在でも他の従業員が代替案を提案してくれる、引き継ぎもスムーズに行いやすいと言えます。
そのため、管理会社を選ぶ際は、管理会社全体で物件情報を共有できているかどうかを事前に確認しておくことをおすすめします。
状況に応じて地域密着型と大手を使い分ける
管理会社を選ぶ際に「大手に任せれば間違いない」と考えている人も多いかもしれませんが、大手が地域密着型よりも優れているとは言い切れません。
大手は認知度が高いので営業力は地域密着型より優れていますが、部署の細分化でトラブルが生じた場合の対応スピードが遅くなりやすいというデメリットが挙げられます。
一方、地域密着型は地域に特化しているので大手とは異なる営業力が期待できる、トラブルが生じても臨機応変にスピード感のある対応をしてくれますが、従業員が少ないので1人あたりの業務負担が大きいというデメリットを伴います。
双方にメリットとデメリットがあるため、オーナーの方針や物件に合う管理会社を選ぶことが重要と言えるでしょう。
現在の管理会社に解約を通知する
変更先の管理会社を決めてからは、現在の管理会社に解約を通知します。解約通知は口頭でも問題ありませんが、「言った」「言わない」でトラブルに発展する可能性があるため、書面で行うのが一般的です。
書面の様式は決まっていませんが、以下の事項が盛り込まれていないと解約通知が無効になる可能性があります。
- 管理委託契約をいつ締結したのか
- 管理委託契約書の何条に基づいて解約を行うのか
- 契約が解約される日がいつなのか
書面の作成方法が分からないという人は、変更先の管理会社に相談すればオーナーの代わりに作成してくれることがほとんどなので気軽に相談してみましょう。
管理会社同士で引き継ぎを行う
現在の管理会社に解約を通知した後、管理会社同士で引き継ぎを行います。現在の管理会社は管理に必要な鍵や書類を保管しているので、それらを新しい管理会社に引き渡します。
鍵や書類などの引き継ぎは新旧の管理会社間で行われることなので、オーナーは特に何も行う必要はありません。
入居者に管理会社変更を通知する
新旧の管理会社間での引き継ぎが完了した後は、入居者に管理会社変更を通知します。通知の手段として以下の3つが挙げられます。
- 入居者に電話をかける
- ポスティングを行う
- 掲示板に書面を貼る
入居者に管理会社変更が周知されていないことが原因でトラブルに発展することもあるため、上記の手段をいくつか組み合わせながら、全ての入居者が管理会社変更を周知しているという状態を作っておきましょう。
管理会社を変更する際の5つの注意点
管理会社を変更する際は、手順だけでなく注意点も事前に確認した上で臨むことが重要です。管理会社を変更する際の注意点として、以下の5つが挙げられます。
- 振込口座の変更を周知させる
- 保証会社の契約が切れないか確認する
- 引き継ぎに漏れがないか確認する
- 入居者の不安・不満が募らないように理解を求める
- 念のため融資機関に管理会社変更を伝える
それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
振込口座の変更を周知させる
委託管理では、管理会社の指定する口座に振り込まれた家賃から修繕費や管理委託費といった費用が差し引かれて残額がオーナーに振り込まれます。そのため、管理会社を変更した場合は振込口座も変更になるので要注意です。
振込口座の変更を周知できておらず、入居者が以前の管理会社の振込口座に振り込んだ場合、組戻しの手続きが必要です。
組戻しの手続きでは、以前の管理会社に迷惑をかける、手続き完了まで資金が拘束されるので資金繰りに支障が生じる、手数料がかかります。振込口座の間違いを防ぐためには掲示板への掲載やポスティングなどを数回行って入居者全員に周知させることが重要です。
また、振込口座の変更に伴って手数料がかかることになった入居者の中には、管理会社変更に不満を抱く人も。口座の開設を予定している入居者には、口座開設完了まで数回分の手数料をオーナーが負担するといったように、不満が募らないようにサポートしましょう。
保証会社の契約が切れないか確認する
賃貸契約では、万が一に備えて連帯保証人を立てる必要がありますが、保証人を立てられない人でも保証会社を保証人として立てることで契約を締結することが可能です。
保証契約は管理会社と入居者と保証会社の3者で交わすため、管理会社を変更した場合は契約の当事者が1人抜けることになります。その結果、管理会社を変更したことで、保証会社の契約が切れる可能性があるので注意が必要です。
保証契約の切れた入居者と賃貸契約を継続することになると滞納リスクが高まるため、事前に契約が切れるのかどうかを確認しておくことが重要です。保証契約を引き継ぐことができれば問題ありませんが、切れる場合は新規に契約しないと滞納リスクが高まります。
新規契約には保証金がかかるため、誰が負担するのか事前に明確にしておくことも重要です。しかし、管理会社変更はオーナー都合によるものなので、入居者の不満を募らせないためにもオーナーが負担することをおすすめします。
引き継ぎに漏れがないか確認する
変更先の管理会社を決定した後は、新旧の管理会社間で引き継ぎが行われるため、オーナーは特に何もする必要はありません。
しかし、鍵や書類などの引き継ぎが行われていない場合、後でトラブルに発展するので注意が必要です。
管理会社を変更して良いスタートを切るためにも、引き継ぎに漏れがないかを確認しておきましょう。
入居者の不安・不満が募らないように理解を求める
入居者の中には、変更に対して不安や不満を抱く人もいます。そのような不安や不満は入居者満足度の低下につながって退去に至る可能性もあるので要注意です。
入居者が不安や不満を募らせないようにするには、なぜ変更に至ったのか入居者に理解してもらうことが重要です。
例えば、管理会社の変更に至った経緯や管理会社を変更することによって得られるメリットを掲示板に掲載するまたはポスティングを行って周知させます。
そうすれば管理会社の変更がプラスになるということを理解してもらえるため、不安や不満が募ることを避けられるでしょう。
念のため融資機関に管理会社変更を伝える
賃貸経営を始める際は自己資金だけでは購入資金が不足するため、融資機関の不動産ローンを利用している人がほとんどです。
融資機関は本人の返済能力や物件の資産価値などを総合的に判断しながら融資を行うかどうか決定します。
融資機関の中には、管理会社も融資判断の1つとするところもあり、管理会社を変更したことが原因でトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
安定した賃貸経営を続けるには、融資機関のサポートが不可欠です。融資機関と良好な関係を築きながら賃貸経営を行うためにも、念のため管理会社の変更を融資機関に伝えた方が良いと言えるでしょう。
まとめ
オーナーの中には、管理会社の対応が遅くて経営に支障が生じているため、管理会社の変更を検討している人もいると思います。
しかし、管理会社の変更には手間と時間がかかるため、まず担当者や管理会社に対応の改善を要求するのが一般的です。
改善を要求しても変化が見られない場合、管理会社の変更を検討しますが、管理会社の選択に失敗すると再度同じ失敗を繰り返すことになるため、慎重に選ばなくてはなりません。また、速やかに管理会社を変更するためにも、変更の手順と注意点を事前に確認しておきましょう。