家賃滞納されたらどうする?家賃滞納への対応方法を解説

投稿日2020/12/03
更新日2020/12/03
家賃滞納

不動産賃貸経営を行うオーナーの中には、家賃を入居者が支払わないのでどうすればいいのか対応に困っているという人も多いのではないでしょうか?

契約解除や強制退去を検討しているオーナーも多いと思いますが、賃貸借契約では貸主よりも借主の権利が保護される、借主に問題があるケースでも自力救済が禁止されているので注意が必要です。

この記事では、家賃滞納への対応方法や家賃滞納を未然に防ぐ方法などを解説します。

滞納家賃の回収には時間と費用がかかる

内容証明

家賃滞納は常態化するケースが多く、裁判で家賃の支払いや部屋の明け渡しを求める場合は、滞納から判決が出るまで半年程度、裁判に数十万円程度と時間と費用がかかります

家賃滞納者の問題は簡単に解決できるものではなく、時間と費用がかかるものだということを覚悟した上で解決へと導く必要があります。

滞納家賃を回収するための訴訟はあまり意味がない

入居者や連帯保証人が支払いを拒んだ場合でも、不動産や給与、預金、生命保険、動産などを裁判で差し押さえれば、滞納家賃を回収できる可能性が高まります。

しかし、滞納家賃を回収するために訴訟を起こすと多額の裁判費用がかかるため、滞納家賃を回収できても費用負担を考えるとオーナーが損をすることも珍しくありません。

滞納家賃を回収するための訴訟はあまり意味がないという理由から、家賃滞納者に滞納家賃の支払いを免除する代わりに部屋の明け渡しを求めるオーナーも多くいます。

強制退去は禁止されている

家賃滞納者と契約を続けていても経営が悪化するだけなので、家賃滞納者が出かけている間に鍵を交換して強制退去させようと考えているオーナーも多いと思います。しかし、自力救済は禁止されています

自力救済とは、権利を侵害している相手に法的な手続きを行わずに自力で権利を回復しようと試みることです。自力救済を行うとオーナーが訴えられる可能性もあるので絶対に自力救済を行わないように注意しましょう。

自力で対応するのは困難なので専門家に相談する

家賃滞納者への対応を誤った場合は、上記のようにオーナーが訴えられる可能性があるため、不動産管理会社や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

不動産管理会社に管理を委託した場合や弁護士に相談すると、それぞれ報酬を支払わなくてはなりませんが、早く・確実に家賃滞納者の問題を解決するには、専門家に相談した方が良いと言えるでしょう。

家賃滞納された場合の対応方法

入居者が家賃を滞納したからと言って、すぐに部屋の立ち退きを求めることができるわけではありません。順を追って部屋の立ち退きを求める必要があるため、どんな手順で対応するのか事前に把握しておくことが重要です。

家賃対応された場合の対応方法は以下の通りです。

  1. 電話や手紙による支払い催促
  2. 連帯保証人に連絡
  3. 内容証明郵便による請求
  4. 建物の明け渡し訴訟
  5. 強制執行による明け渡し

それぞれの対応方法について詳しく見ていきましょう。

①電話や手紙による支払い催促

入居者が家賃を滞納した場合、まずは電話や手紙などで家賃の支払い催促を行います故意に滞納している可能性もあるため、支払い期日の翌日には支払い催促を行って、家賃の滞納には厳しいという姿勢で臨むことが重要です。

家賃滞納者と連絡が取れた場合、滞納の状況を伝えるだけでなく、いつまでに支払えるのかを確認します。期日までに支払わなければ、連帯保証人に代わりに家賃を請求する旨も伝えると家賃滞納者の危機感を持つので、滞納家賃を回収しやすくなるでしょう。

②連帯保証人に連絡

再設定した支払い期日までに家賃が支払われなかったまたは催促をしても家賃滞納者と連絡が取れない場合は連帯保証人に連絡します。連帯保証人に連絡すると、「借主に請求してくれ」「借主の財産に強制執行してくれ」と言われる可能性があります。

しかし、連帯保証人には借主に先に請求する権利(催告の抗弁権)、借主の財産に強制執行を請求する権利(検索の抗弁権)がないため、貸主の要求に応じなくてはなりません。しかし、連帯保証人が滞納家賃の支払いに応じない可能性があります。

このように連帯保証人が支払いを拒否または連帯保証人と連絡が取れないケースでは、訴訟の準備を進めていくことになります。

③内容証明郵便による請求

滞納期間が3カ月を経過した場合は、支払い期日(内容証明郵便が到着してから1週間程度)を定めて内容証明郵便で家賃の支払いを請求します。この内容証明郵便には、支払い期日までに家賃が支払われない場合、契約解除や裁判に発展することを盛り込みます。

「なぜ滞納期間が3カ月なの?」と疑問を抱いたオーナーも多いかもしれませんが、解約解除を申し出るには貸主と借主の間の信頼関係が破綻するような事実が必要になるためです。

しかし、滞納期間が3カ月以上でも、必ずオーナーの要求が認められるというわけではないので注意が必要です。

④建物の明け渡し請求訴訟

借主が家賃の支払いや契約解除にも応じない場合は、建物の明け渡し訴訟や未払い家賃請求を裁判所に提起します

オーナーの対応方法に不備がなければオーナーの要求が認められることがほとんどで、訴訟を提起してから約3~4カ月で裁判が結審し、判決が確定します。

⑤強制執行による明け渡し

判決が確定しても立ち退かない借主に対しては、強制執行の申し立てを行います。強制執行の申し立てを裁判所が受理し、裁判所が借主に催告状を送付すれば強制退去の準備が完了です。

催告状には明け渡しの期日が記載されており、期日を迎えてもまだ退去していない場合には、裁判所の執行官による強制執行となります。

家賃滞納者が部屋の明け渡しに応じず、強制執行による明け渡しに至った場合、家賃滞納から強制執行まで約1年かかることもあります

家賃滞納に陥る理由

振込

家賃滞納に陥る理由は人それぞれです。家賃滞納に陥る理由に合わせながら柔軟に家賃徴収に対応すれば、滞納家賃をスムーズに回収できる可能性が高まります。入居者が家賃滞納に陥る主な理由は以下の6つです。

  • 仕事をリストラされた
  • 転職した直後または急な出費で家賃が支払われていない
  • 振り込み忘れや外出先で振り込めなかった
  • 借金返済に追われて家賃が後回しになっている
  • 入居者が亡くなったもしくは行方不明になった
  • 支払う気がない

それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。

仕事をリストラされた

バブル崩壊前は終身雇用が保証されるケースが多かったものの、ニーズの変化が目まぐるしい昨今は、生き残りをかけて早期退職を募る、人員削減に取り組む企業も増えています。また、バブル崩壊やリーマンショックなどの影響を受けて事業の継続が困難になる企業も。

上記に該当して仕事をリストラされた入居者は、しばらく預金を崩すまたは失業保険を家賃の支払いに充てることが可能です。しかし、再就職先がうまく見つからない場合は、家賃滞納に陥るだけでなく、滞納が長期化する可能性が高いので注意が必要です。

転職した直後または急な出費で家賃が支払われていない

就職、転職の直後は、家賃の引き落とし日に給料の振り込みが間に合わず、家賃を支払えない可能性があります。また、急な出費で口座残高が少なくなって、残高不足で家賃が支払えないケースも。

上記に該当するケースでは、家賃滞納が一時的なものなので、長期の家賃滞納に陥る可能性は低いと言えます。しかし、初回の家賃滞納の対応を疎かにすると、入居者の滞納への危機感が下がるため、毅然とした態度で家賃回収に臨む必要があります。

振り込み忘れや外出先で振り込めなかった

家賃の支払いが口座引き落としで、家賃の引き落とし口座と給与の振り込み口座を分けている借主は、給与を引き落とし口座に振り込み忘れる可能性があります。また、口座振り込みでは振り込み忘れや外出先で振り込めないといった理由で支払いが遅れることも。

上記のようなケースは、故意的な家賃滞納とは言えないため、長期の家賃滞納に陥る可能性は低いと言えます。しかし、頻繁に入金遅れが生じた場合、キャッシュフローが悪化するため、常態化しないように一度目の支払い遅れに毅然とした態度で家賃回収に臨みましょう

借金返済に追われて家賃が後回しになっている

入居者の中には、給料をギャンブルにつぎ込んで借金地獄に陥る人も。その結果、借金返済に追われて家賃の支払いが後回しになっているケースも多く見られます。

上記のケースでは、家賃滞納が常態化する可能性が高く、自己破産された場合は連帯保証人や家賃保証会社に滞納家賃を請求できますが、本人から直接滞納家賃を回収できなくなります。

家賃回収に手間と時間がかかる可能性が高いため、強制退去を視野に入れておく必要があるでしょう。

入居者が亡くなったもしくは行方不明になった

入居者が亡くなったもしくは行方不明になって音信不通になって、結果的に家賃が期日までに支払われないケースもあります。

上記のケースでは、本人から家賃を徴収しようとしても回収が不可能である点が他のケースと異なります。このような場合、家賃回収を試みるよりも強制退去に持ち込んだ方がスムーズに状況を解決できる可能性が高いでしょう。

支払う気がない

入居者の中には、最初から家賃を支払う気が全くない人もいます

上記のように入居者が故意に家賃を支払わないケースでは、本人からの家賃回収はほぼ不可能です。訴訟を起こしても、費用を考えるとオーナーが損をする可能性が高いため、強制退去に持ち込んだ方が良いと言えるでしょう。

柔軟に家賃滞納に対応する

家賃滞納には上記のように様々な理由が挙げられます。家賃を回収できる可能性を高めるには理由に合わせて柔軟に家賃滞納に対応することが重要です。

滞納家賃を回収する方法として、以下の4つが挙げられます。

  • 就職先が見つかるまで待つ
  • 入金の期日を決める
  • 弁護士に相談するよう促す
  • 連帯保証人に連絡する

それぞれの回収方法を詳しく見ていきましょう。

就職先が見つかるまで待つ

仕事をリストラされたケースでは、連帯保証人に連絡して家賃を徴収することも可能ですが、就職先が見つかるまで待つ、一時的に家賃を引き下げるなどのように入居者に歩み寄ることも選択肢の1つです。

人口の減少で入居者の確保が困難、仲介手数料を不動産管理会社に取られることを考えると、就職先が見つかるまで待ってみても良いでしょう。

入金の期日を決める

借主の振り込み忘れによるうっかりミスや急な出費による一時的な支払い困難が理由の場合は本人に支払いの意思があることがほとんどです。

そのため、入金の期日を決めて、それまでに振り込みが完了すれば良いという旨を伝えれば、期日までに滞納家賃を回収できる可能性が高いと言えます。

家賃滞納が常態化する可能性もあるため、入金の期日を過ぎても家賃が支払われない場合は、連帯保証人に連絡する旨や契約解除に至る旨、裁判に発展する可能性がある旨を伝え、安易に滞納してはいけないという意識を持たせましょう。

弁護士に相談するよう促す

借金返済に追われて家賃の支払いが後回しになっている場合は、連帯保証人に連絡して家賃を徴収することも可能ですが、弁護士に相談するように促すのも選択肢の1つです。

弁護士に相談した場合、債務整理を進めていくことになります。債務整理とは、借金の減額や支払いに猶予を持たせることによって借金の負担を軽減できる手続きです。

歩み寄る姿勢を見せることで継続的に入居してくれる可能性が高まりますが、借金の常態化で今後も借金返済に追われる可能性が高いと感じた場合は、弁護士に相談することを促すよりも強制退去を選択した方がリスクを抑えられるでしょう。

連帯保証人に連絡する

入居者に支払う意思がないといったように、家賃の回収が困難と感じた場合は、連帯保証人に連絡して家賃の回収を進めていきます。入居者が亡くなったもしくは行方不明になった場合も連帯保証人に連絡して家賃の回収を進めていきますが、少し注意が必要です。

連帯保証人は、入居者が亡くなったもしくは行方不明になったことに心を痛めている可能性が高いと言えます。そのため、上記のようなケースで連帯保証人に連絡する際は、相手の感情を踏まえながら連絡するといったような配慮を忘れないようにしましょう。

家賃滞納を未然に防ぐための4つの方法

保証人

家賃滞納への対応は時間と費用がかかるものが多く、家賃滞納を未然に防ぐ方法を知りたいと考えているオーナーも多いと思います。家賃滞納を未然に防ぐための方法として、以下の4つが挙げられます。

  • 入居審査の基準を明確にする
  • 入金確認を怠らない
  • 連帯保証人や保証会社を指名する
  • サブリース契約を締結する

それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

入居審査の基準を明確にする

入居審査の基準が明確になっておらず、審査を疎かにしているケースでは家賃滞納のリスクが高まります。そのため、入居審査の基準を明確にした上で審査に臨むことが重要です。

例えば、家賃をきちんと支払ってくれる可能性の高い属性に絞ることで、家賃滞納のリスクを抑えることが可能です。

公務員や上場企業の従業員などは、家賃をきちんと支払ってくれる可能性の高い属性ですが、定職に就いていない人やフリーランス、アルバイト、派遣社員などは家賃滞納リスクが高いと言えます。

勤務年数が浅い場合は、途中退職のリスクも考えられるため、勤務先や勤務形態だけでなく、勤務年数も確認しましょう。

入金確認を怠らない

家賃滞納への対応が遅れると、家賃滞納者は「何も言ってこないので次も遅れても大丈夫」と誤解する可能性があります。家賃滞納を常態化させないためにも、入金確認を怠らないことが重要です。

支払い期日と支払い期日の午前中にも入金確認を行ってまだ入金されていない場合、午後には支払い催促の連絡を行います。

支払い期日までに家賃を支払う代わりに部屋を提供するという賃貸契約を締結している以上、支払い期日を守らない行為は契約違反と言えることから、毅然とした態度で未納者への連絡を行いましょう。

連帯保証人や保証会社を指名する

入居者が家賃滞納に陥っても連帯保証人や保証会社を指名していれば、家賃滞納者から家賃を回収できないという事態を防ぐ効果が期待できます

しかし、連帯保証人の場合は、滞納家賃を必ず回収できるとは言い切れません。連帯保証人が支払いを拒否すれば訴訟で滞納家賃の回収を目指すことになります。

一方、保証会社の場合は、滞納した時点で保証会社から滞納家賃を回収できるため、漏れなく回収できるのが大きなメリットと言えるでしょう。

サブリース契約を締結する

サブリース契約とは、不動産管理会社が一括で借り上げて転貸する契約方式です。オーナーは不動産管理会社から空室に関係なく満室状態の家賃を受け取れることから、家賃滞納リスクを抑えることができます。

しかし、サブリース契約には、不動産管理会社から支払われる家賃が相場より10~20%低い、入居審査が不動産管理会社任せになる、一定期間ごとに賃料が見直されるなどのデメリットを伴います。

そのため、サブリース契約を締結する際はメリットだけでなくデメリットもよく確認してから締結しましょう

まとめ

所有している賃貸物件で家賃滞納が生じた場合、すぐに滞納家賃を回収したい、家賃滞納者を退去させたいと考えているオーナーも多いと思います。

催促や内容証明郵便の送付などで滞納家賃の回収を進めていきますが、家賃滞納者が支払いに応じないケースも多く、訴訟に発展することも珍しくありません。

家賃滞納者への対応は、時間と費用がかかるだけでなく、対応を誤るとオーナーが訴えられる可能性もあるため、不動産管理会社や弁護士などに依頼することをおすすめします。

また、家賃滞納者への対応方法を身につけるだけでなく、どうすれば家賃滞納を未然に防ぐことができるのかもあわせて確認しておくことが重要と言えるでしょう。